国会 公聴会


第131回国会 地方行政委員会,大蔵委員会連合審査会公聴会 第1号 平成06.11.21
第116回国会 税制問題等に関する特別委員会 第14号 平成01.12.06
第112回国会 予算委員会公聴会 第2号 昭和63.02.16
第109回国会 大蔵委員会 第7号 昭和62.08.27
第108回国会 予算委員会公聴会 第1号 昭和63.03.19


第116回国会 税制問題等に関する特別委員会 第14号

平成元年十二月六日(水曜日)
   午前十時一分開会
    ─────────────
   委員の異動
 十二月五日
    辞任         補欠選任
     庄司  中君     粕谷 照美君
     谷畑  孝君     渕上 貞雄君
     種田  誠君     穐山  篤君
     野別 隆俊君     安恒 良一君
     吉田 達男君     山口 哲夫君
     吉岡 吉典君     橋本  敦君
 十二月六日
    辞任         補欠選任
     秋山  肇君     横溝 克己君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         中村 太郎君
    理 事
                井上 吉夫君
                沓掛 哲男君
                宮澤  弘君
                村上 正邦君
                稲村 稔夫君
                及川 一夫君
                本岡 昭次君
                矢原 秀男君
                近藤 忠孝君
                古川太三郎君
                寺崎 昭久君
    委 員
                伊江 朝雄君
                大木  浩君
                鎌田 要人君
                北  修二君
                久世 公堯君
                佐々木 満君
                谷川 寛三君
                前島英三郎君
                松浦  功君
                松浦 孝治君
                守住 有信君
                山岡 賢次君
                穐山  篤君
                上野 雄文君
                大渕 絹子君
                粕谷 照美君
                渕上 貞雄君
                細谷 昭雄君
                前畑 幸子君
                村田 誠醇君
                安恒 良一君
                山口 哲夫君
                刈田 貞子君
                常松 克安君
                和田 教美君
                橋本  敦君
                高井 和伸君
                三治 重信君
                下村  泰君
                横溝 克己君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        竹村  晟君
       常任委員会専門
       員        保家 茂彰君
   参考人
       経済評論家    河野 光雄君
       経済評論家    井上 隆司君
       全国間税会総連
       合会会長     古岡  勝君
       主婦連合会副会
       長        中村 紀伊君
       ジャーナリスト  山口 令子君
      
 税  理  士  関本 秀治君
       税  理  士  大島 隆夫君
       日本労働組合総
       連合会社会政策
       局次長      土井 隆史君
       千葉県館山市長  半澤 良一君
       武蔵大学教授   今井 勝人君
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  本日の会議に付した案件
○消費税法を廃止する法律案(久保亘君外七名発議)
○消費譲与税法を廃止する法律案(久保亘君外七名発議)
○地方交付税法の一部を改正する法律案(久保亘君外七名発議)
○税制再改革基本法案(久保亘君外七名発議)
○法人税法等の一部を改正する法律案(久保亘君外七名発議)
○通行税法案(久保亘君外七名発議)
○物品税法案(久保亘君外七名発議)
○入場税法案(久保亘君外七名発議)
○地方税法の一部を改正する法律案(久保亘君外七名発議)
    ─────────────

○委員長(中村太郎君) どうもありがとうございました。
 次に、関本参考人にお願いいたします。
○参考人(関本秀治君) 税理士の関本でございます。
 現在、本委員会において審議中の消費税廃止関連三法案、税制再改革基本法案及び代替財源関連五法案につきまして意見を述べさせていただく機会を与えていただきまして、まことに感謝しております。
 まず最初に、消費税廃止関連三法案についてでございますが、去る七月二十三日に行われました参院選において下されました国民の審判は極めて明確でございます。主権者のこの明確な意思に沿って消費税は直ちに廃止されるべきものであると思います。そもそも消費税法は、大型間接税は導入しないという中曽根元総理の三年前の選挙公約によって得られました三百余議席を背景としまして、強行採決に次ぐ強行採決によって成立させたものであって、国民の一人として到底このようなことは認容するわけにはまいらないわけでございます。これは余りにも乱暴な議会制民主主義のルールに違反したものでありまして、さきの参院選によって消費税ノーという国民の審判が下されました以上、むしろ政権党や政府の側から進んで廃止法案を提出されるべきではなかったかというふうに考えるわけでございます。
 また、消費税を廃止せよという主張に対しましては、それにかわる財源を示さないのは無責任である、こういういわゆる財源セット論が強く主張されております。現在本委員会で審議されております野党四会派の皆さんによって提案されました代替財源関連五法案、これも代替財源の調整は政府の責任である、こういう前提のもとに提示されているわけではありますが、趣旨説明にもございますように、予算編成権は内閣にあるわけでありまして、憲法七十三条及び八十六条によりまして、政府は与えられた財源に基づいて予算を編成し、これを国会に提出してその承認を得なければならないことになっております。これは内閣の権限であるとともに義務でもあるわけでございますから、財源セット論は主客転倒の議論であるというふうに考えます。ですから、国民の切実な願いであります消費税の廃止、これは国民の圧倒的多数の要望でございますから、他の問題とは切り離して即時廃止するのが筋であると考えるものでございます。
 こういう点から見ますと「国民に対して政策責任を明らかにするため」と述べられてはおりますけれども、代替財源案は、自民党の皆さんの審議引き延ばしの道具に使われてきたという現実から見ましても、消費税廃止関連法案から切り離すことが賢明な方策ではなかろうかと考える次第でございます。
 次に、今月一日に発表されました自民党の消費税の見直しに関する基本方針につきまして一言意見を申し上げたいと思います。
 既に本委員会におきましても、あるいはマスコミなど各界からも厳しい批判がなされているところでございますが、思い切った見直しという総理の公約に照らしてみましてもいささか羊頭狗肉の感をぬぐい切れない次第でございます。総理の十一月中に発表するという約束が守られないで、議論百出で十二月一日にずれ込んでしまいました。これも結局、幾ら手直しをしてみても消費税の根本的欠陥を取り除くことはできないということが原因でございます。消費税の欠陥をなくするためには、消費税そのものを廃止する以外には方法はございません。
 食料品については、生産から卸売までの過程を一・五%の軽減税率としまして、小売段階だけを非課税とするということでありますが、食料品の消費支出に占める割合は二割程度でありまして、その減税効果はまことに微々たるものであります。そのほか、出産、埋葬・火葬、入学金などの学校納付金、検定済み教科書、身障者の用具、それから老人福祉センターなど第二種社会福祉事業、家賃、これらを非課税として追加することとしておられますが、これらの事業を行う者の購入する資材、経費等にはすべて課税されているわけでありますから、これら非課税品目の価格、料金等への影響もまた微々たるものでありまして、消費税の根本的欠陥の一つでございます逆進性を緩和するためにはほとんど役立たないものでございます。
 フランスでは、逆進性を緩和するために、二・一%、四%、五・五%、七%という軽減税率、標準税率は一八・六%でございます。さらに二八%、三十三カ三分の一%という割り増し税率、こういう実に八段階の税率を用いております。それでもなおかつ付加価値税の逆進性は余り緩和されていないという報告がなされております。
 消費税は老人や子供、体の不自由な方々からも一律に徴収するという意味で最悪の大衆課税であるという批判をかわすために考えられたと思われます公的年金控除のわずかな引き上げも、所得税の課税最低限以下の世帯にとっては何の役にも立たないものでございます。これも選挙を意識した宣伝効果をねらった小手先の手直しであると批判されてもやむを得ないのではないかと考えるわけでございます。消費税の表示方式について、税額が消費者に見えにくくするようにする総額表示方式、いわゆる内税方式の導入、普及ということも掲げられておりますが、毎日が納税日であるという消費者の不満をそらすための消費税隠し以外の何物でもございません。アメリカの州税として実施されております小売売上税は、法律によって税額を消費者に明示しなければならないということになっておりまして、これが税率を引き上げられない最大の歯どめとなっているということを見
ましても、いわゆる内税方式、見直し案の言う総額表示方式の指導、普及ということは到底許されるものではないというふうに考えます。
 さらに、消費税の使途を優先して国民福祉のための経費に充てるという旨の規定を定めようということが述べられておりますが、これはいわゆる福祉目的税論にほかならないと思います。消費税を福祉財源に充てますと、自動的に一般財源がその分だけ浮いてまいります。これが毎年突出増を続けております軍事費やアメリカの世界戦略の一翼を担う政府開発援助、いわゆるODA財源にならないという保証はどこにもないわけでございます。このように福祉財源論は、ところてん式に消費税を軍拡財源に充てることであると同時に、福祉のための支出が増大すると税率の引き上げはやむを得ないとか、増税が嫌なら福祉を切り捨てるという議論につながってくる危険性があるわけでございます。高齢化社会を迎えるに当たりまして、私はこの点につきまして特に危惧しているわけでございます。
 最後に、税制再改革基本法案並びに代替財源関連法案について意見を述べさせていただきたいと思います。
 消費税廃止は現在の国民的な要望でございますから、これは他と切り離して直ちに行うべきことは最初に申し上げたとおりでございますけれども、消費税廃止後の税制のあり方についてはまだ国民的なコンセンサスは形成されておりません。したがいまして、消費税廃止に伴う代替財源について性急な結論を求めようとすることはいかがなものかというふうに考えるものであります。
 幸いにしてこの数年間多額の自然増収が続いております。八七年度、八八年度とも当初予算比で七兆円に上る自然増収が記録されております。本年度につきましても、自然増収は三兆円とも五兆円とも言われておりますが、今月一日に大蔵省が発表されました十月税収も、前年同月比七・四%増ということが報じられております。十月三日の日本経済新聞によりますと、国民経済研究協会の発表した中期経済予測では、九二年度まで平均五%近い経済成長が見込まれまして、九二年度の歳入歳出では七兆五千億円以上の歳入超過があるので、財源措置としての消費税ならやらなくてもやっていける、こういう見方を示しているとのことであります。
 税制再改革基本法案では、応能負担原則、直接税主体と述べながら、「所得、資産、消費等に対する課税についての均衡ある税体系の構築」が基本原則の一つとして掲げられておりまして、基本方針としては「社会保険診療報酬課税の特例、みなし法人課税、公益法人課税の特例」、それから「納税者番号制度の導入」、「サービス、流通等に対する適正な課税」など、これまで政府税制調査会等が答申で述べているところと同一の思想、つまりクロヨン論だとか、あるいは直間比率見直し論など、納税者運動を分断させたり、あるいは大型間接税導入に道を開いてきたそういう考え方が根底にあると解されかねない部分が散見されます。これで国民的なコンセンサスを得ることはかなり困難ではないかと考えるものであります。むしろ再び、先ほど申し上げましたような点から、大型間接税導入に口実を与えることになるのではないかという懸念を抱いております。
 将来のあるべき民主的な税制につきましては、このような一定の枠をあらかじめはめることなく十分な検討を行い、特に大企業、大金持ちに対する優遇措置をなくし、本当に公平な税制を考えていけば、そこから財源はおのずと生まれてくるはずでございます。
 不公平な税制をただす会の試算によりますと、不公平税制の是正により国税で十兆円、地方税で七兆円の財源が確保されると言われておりますけれども、そこまでいかないといたしましても、年間七、八兆円程度の規模の財源を確保することは十分可能でございます。
 こういうことを税制に関する専門家の立場から申し上げまして、私の意見陳述を終わりたいと思います。ありがとうございました。

○委員長(中村太郎君) どうもありがとうございました。


○理事(井上吉夫君) 恐縮ですが、時間が参っておりますのでごく手短に。
○参考人(関本秀治君) 関本でございます。
 一言だけで申し上げたいと思います。消費税を廃止すればこういう矛盾は一切なくなります。
○近藤忠孝君 関本参考人にお聞きします。
 この四会派の出しております税制再改革基本法案、流通、サービスへの課税を検討するという規定であります。この点は午前中も問題になったわけでありますけれども、やはり流通やサービスへの課税を検討すればおのずと新しい分野の課税、この点については社会党の伊藤政審会長も中型間接税ということを別のところで述べておりますので、そういったところに限りなく大型間接税に近づくんじゃないのか、だから検討してみた結果は消費税と余り変わらないものになるんじゃないかという問題が午前中も指摘されました。この法文上、これに対する歯どめが私はないんだと思うんですが、この点いかがでしょうか。
○参考人(関本秀治君) この点につきましては、近藤先生御指摘のとおりだろうと思います。まさに所得、資産、消費に対して均衡のとれた税制の構築というようなことが言われておりますけれども、こういう言葉は、実は売上税あるいは消費税導入の基礎になりました政府税調等の答申の中にも随所にあらわれている考え方でありまして、これを突き詰めて発展させてまいりますとどうしても一般的な消費税、つまり大型間接税に行き着かざるを得ない、こういうことになると思いますので、そういう点でなかなか国民的なコンセンサスが得にくいのではないか、このように考える次第でございます。
○近藤忠孝君 もう一点は、納税者番号制度についてであります。
 総合課税を本当にやる気になれば、番号制度を設けなくても公正な課税が私は可能だと思うんです。この四会派も納税者番号の対象とするのは資産性所得、ですから預金とかあるいは株の売買益などだと言っておるんですね。そういうぐあいに限定されるのであれば、現在の制度を前提にしましても、仮名取引の禁止、それから証券会社に取引の報告義務を設けますと、これは基本的には脱税は極めて困難になってくる。だからそういう制度。また預金に関しましては、ADPシステムというのが、これはマル優廃止のときに私も議論して、国税庁の答弁に出ておりますけれども、住所、氏名、生年月日、こいつをインプットしますと九九%捕捉可能だ。となりますと、現行制度で可能なんではないか。にもかかわらず、これをもし導入しますと、これはプライバシーの侵害が大変大きいんだと思うんですが、その侵害が一体どんなことになるんだろうか。そして、この点について国民的合意が果たして得られるものかどうか。しかも、二年間というそういうめどで得られるものかどうか。この点についての御見解があればお聞きしたいと思います。
○参考人(関本秀治君) お答えいたします。
 納税者番号制度につきましては、アメリカでは社会保険制度を基礎として発展してきたわけでありますけれども、これが納税者番号として課税のために使われるようになるまでにはかなりの検討が進められておりますし、何よりも情報の公開、それからプライバシー権の保護、こういうことと並行してなされませんと、これは国民生活上重大な問題になる危険性があるということを申し上げたいと思います。
 特に、我が国の税務行政におきましては、寝室まで令状もなしに踏み込んで調査をするというような大変権力主義的な税務調査が横行しておりますし、それから、何よりも自分についての情報が一体正しく課税当局に把握されているのかどうか、あるいは何が把握されているのかということを知る権利は全くないわけであります。そういうものを整備しないままこの背番号制のようなものを課税のために一挙に導入するということになりますと、これは徴税機構を通じての国民の統制というような大変な危険性が生まれてくるということが大きな懸念として考えられるわけであります。
 そういう点からいいましても、この番号制につきましては、実はさきのマル優廃止、これでいわゆる金融資産に対する課税がほとんど二〇%の分離課税だけで野放しになったということがございますし、今回のキャピタルゲイン課税の問題につきましても一%の分離課税だけで、あとはすべて何千万もうけようが何億もうけようが課税の範囲から外されてしまうということでございまして、そういう意味では現行の税制がやればできる、今まさに先生御指摘のとおりでございます。制度としては、現在税務署にきちんと名寄せをすることさえすればできる制度があったにもかかわらず、それをやらないで野放しにしてしまった、こういうことで、恐らく相続税の課税でも今後金融資産についての課税漏れが相当出てくるのではないかということが、さきの税制改革によりますマル優廃止、あるいはキャピタルゲイン原則一%の源泉分離課税というような制度によってもたらされたというふうに考えざるを得ない、このように思います。

○近藤忠孝君 次に、自民党の見直し案について先ほど指摘がありましたけれども、これが実務的に実際はどうなのか。帳簿制度ですから、この帳簿制度を前提として課税、非課税、軽減税率、これは実際の実務の中で本当に大変だと思います。しかも、食品かどうか、小売かどうかというこの区別等々ですね。これは現場では実際どんなことになるんでしょうか。
○参考人(関本秀治君) お答えいたします。
 私、税理士として毎日実務をやっておりますけれども、この九月末から法人の四、五、六、七月の申告、それから十月は八月決算申告、十一月は九月決算申告ということで、三回にわたって法人の消費税申告をしてまいりましたけれども、現在のこの三%の単一税率で非課税品目八品目という非常に限られた税制のもとでも、課税非課税の案分、それから控除すべき税額を、課税売上割合あるいは課税売上割合に準ずる割合を税務署長の承認を得て計算するというようなことですとか、あるいは収入の中で課税売り上げと非課税売り上げ、さらには不課税、課税されない、全く資産の譲渡の対価でないものでありますけれども、不課税というようなものを別個に区分して経理して、なおかつ法人の決算をする前にこれは消費税の決算をした上でなければ法人税の申告はできない、もちろん決算も組めない、こういう大変なことになっております。
 現行のこの消費税であってもそのような大変な苦労が要るわけでありまして、これを一般事業者の方にやりなさいと言われても、恐らく現行であってもほとんど完全にできる人はいないのではないかというように思いますけれども、今回の見
直し案によりますとさらに食料品については生産から卸売まで一・五%の軽減税率ということになりまして、現行でも六%と三%の、一部は時限立法でありますけれども、複数税率があるところに、さらに一・五%の三段階税率が入ってくるということになりますと、これはもう私ども専門家でありましても決算はお手上げという状態でございます。
 さらに、先ほど申し上げました課税売り上げに対応する仕入れ税額、控除すべき仕入れ税額、あるいは非課税売り上げに対応する仕入れ税額等の計算につきましても、税務署に課税売上割合でなくて特別な合理的な方法で仕入れ控除の計算をしたいというような申請をいたしましても、これは取り下げてほしいというようなことが言われているようであります。法律上そういうことはないわけでありますけれども、全国で認められているのはわずか二百法人程度しかないというような話がございます。そういう実情でございまして、もうこれは見直し案がもし実施されたならば、私はまずそのとおり成立する見込みはないんではないかというふうに予測しておりますけれども、本当に実務上これはもう税理士でさえお手上げでありますから、中小零細の事業者の方がこれに対応できないのではないかという危惧を実務上非常に強く持っているわであります。

○近藤忠孝君 私も既に橋本大蔵大臣に、こんなものを執行できるのかということを指摘したところであります。
 次に、今井参考人でありますが、先ほどの所得格差に関する御意見、私も全く同意見で、私自身もここ三、四年来予算委員会あるいは大蔵委員会においてこの問題の指摘をしてまいりました。政府自身も、実際上の資料を示せば、最近は所得の格差は拡大しているという事実は認めざるを得ないんです、事実は。ただ、シャウプ税制時代に比べて拡大しているとか、あるいは外国に比べれば日本は格差は小さい方だと。
 しかしこの数字は、御承知だと思いますけれども、間違った数字で、本当の数字を出せばアメリカと並んでほぼ世界最高の格差がある国であります。こういったことが明らかになったにもかかわらず、なおかつ平準化している、だから広く薄い負担を国民に求めるという論拠に使っておるんです。だから、そういう意味ではますますこの面の御研究を進めていただきまして、政府がもう全く反論できないような状況をひとつおつくりいただきたいということを、これは要望でありますけれども。私、さらに今後はもっとこれ広がるんじゃないかと思うんですよ。一つは土地の問題、金、資産性所得の急増、この拡大のカーブはもっと急激に強まっていくんじゃないかと思いますが、端的にお答えいただきたいと思うんです。
○参考人(今井勝人君) お答えいたします。
 陳述の中で申し上げたとおり、私もそういう格差は今後拡大していくだろうというふうに考えておりますが、ただこれがどういうスピードでどのくらいというところまで考える能力は現在の私にはございませんので、勘弁してください。
○近藤忠孝君 今後の研究の成果をひとつ期待したいと思います。いいのが出てきたら、私この国会でひとつ利用させてもらいたいと思っております。
 山口参考人でありますが、先ほど大型間接税がいずれ必要になるとおっしゃいましたが、その根拠、特に今、今井参考人も述べられた、今も明確になったようなこういう平準化とは逆の状況が起きている中で、今後またそれが拡大していくということが明確に予測される中で、なぜ大型間接税がいずれ必要になるんだろうかというこういう点であります。
 またもう一点は、先ほど間接税は出の段階で公平だ、これは恐らく同じ支出に同じ課税がされるから公平だというんでしょうが、私は同じ支出であってもやはり実態は相当支出する人の立場で違うと思うんです。例えば年金生活者、大体月十万円前後、これが普通だと思いますね。
   〔理事井上吉夫君退席、委員長着席〕
こういった方々の消費税は月に大体二千数百円です。この人々の生活にとっては大体三日から四日分の食費代。ということは、年四十日食べられない。食べないわけにいきませんから、ほかの面でずっとこれは生活を圧縮していくというそういう人々。例えばこれも年金生活者ですが、どうも赤字だ、赤字だと詰める部分はこの方は男性だから酒を詰めると。しかし、もう年をとって酒が飲めなくなったら生きがいがなくなってしまう、こういう人は月大体一万円です。支出の一割だと多いんじゃないかと思うけれども、しかしこれは一日ビール一本ぐらいですね。こういう支出ともっとゆとりのある支出、私は出の段階で同じ課税だからこれは公平だという、どうしてそういう根拠が出てくるのか、この二点について端的にお答えいただきたいと思います。
○参考人(山口令子君) まず第一の点でございますけれども、大型間接税がいずれ必要になるであろうということは、高齢化社会において若い人たちが高齢者に比べますと数が少なくなっていくという中で、直接税だけに頼っていますと非常にその負担が大きくなるということもありますし、それから最初に申し上げたんですけれども、あるいは先ほどから今井参考人がおっしゃっているように、間接税そのものが悪いということではなくて、むしろ間接税のあり方という点において消費税の現在のようなあり方ではないという方向も考えているのではないかというふうに私はこの基本法案というものを読む上で受け取ったということでございます。
 それからもう一つなんでございますけれども、例えば間接税が出の面においての公平というものに受け取れると申し上げましたのは、例えば同じ所得の場合にそれだけで公平と見るのか、あるいは個々人がどういうライフスタイルをとるかということも含めて公平というふうに見るのかということがあると思うんです。同じ所得であるとしても、人によっては余り物を買わないで暮らしたいという人もあるでしょうし、あるいは先ほどおっしゃったようにお酒を飲みたいという人もいるでしょうし、そういったライフスタイルも含めた上での公平というものを制度的に見ていく上においては、間接税というものが必要になると思います。ただ、一律に三%なら三%にするということにするのか、あるいはある特定のものだけについては大幅にもっと課税するのかということに関しては、まだ議論の余地はあると思います。ただ、私が申し上げた出の面においての公平ということは、つまりライフスタイルも含めた上での公平ということを申し上げたわけです。
○古川太三郎君 連合参議院の古川でございます。
 参考人の皆さん、御苦労さまでございます。
 まず初めに、今井参考人からお聞きしたいと思います。
 消費税導入の前提として国民所得の平準化、あるいはまた格差の減少、こういったものが基本でなければならない。そういったものについては今近藤さんも質問されましたけれども、資産性所得については、現在はむしろその平準化じゃなくてその格差の増大が大きく叫ばれております。こういう利子配当あるいはキャピタルゲイン、土地税制、こういったものをなおざりにして消費税を導入したところに国民の大きな怒りがあったと、こう考えております。それなのに、竹下税制では今までは利子配当課税は原則としては総合課税でございました。それをさきの税制改革では分離課税を徹底しております。そのために、本来ならばこういう資産をお持ちの方は大体が七五%ぐらいの税率の所得税をかけられていた方々が、あるいはまあ五〇%以上でもいいですが、その方々がむしろ五〇%に逆に非常に低率になっている。本来ならばこういう方々の税率を非常に上げなきゃならぬ、あるいはこういう方々の所得を捕捉しなきゃならぬというところから見れば、まさに反対の方向に行っているように思えてならないのでございます。
 そういうことでありますと、働かなくてもいい方、資産をお持ちの方がそのままどんどんと大き
くなっていく。働いても働いてもそういう方々に重税感が多い、こういう制度であっては税の信頼をかち取ることができない。そういう意味から考えますと、さきの税制改革は非常に方向としては間違っている方向に行っている。完全分離課税として利子も配当も二〇%というようになり、これが総合課税からは非常に遠のいてしまった。本来ならば現在五〇%以上の税率でかかってくる所得税が二〇%だけで済んでしまう、こういう税制があるんだと思いますけれども、今そういう状況での消費税導入について今井参考人はどのようにお考えになっておりますか、お聞きしたいと思います。
○参考人(今井勝人君) お答えいたします。
 私も、御指摘のとおり、利子や配当といったような資産所得を分離課税にして、しかも二〇%という従来よりもさらに下げた税率で課税するというのは非常に大きなマイナスであったろうというふうに考えております。言うまでもなく、先ほど来繰り返し申し上げておりますように、所得税がいい税であるための条件の一つには所得の総合化ということが必要なわけでありまして、それに逆らうものだと言わざるを得ないと考えております。
 一つ問題は、先ほど来若干御議論のありました所得の総合化をどういうふうにやるのかということが多分現実問題としてはかなり大きな問題になろうかと思いますが、私はこれはいろいろなやり方があり得るだろうというふうに考えております。要は、例えば利子所得であれば名寄せをどういうふうにするかということでございます。その名寄せをするやり方は多分いろいろなやり方があり得て、その中で国民の合意が得られるような道を、方法を考えていっていただくことが必要かと、そんなふうに考えております。
 以上でございます。
○古川太三郎君 いま一点お伺いします。
 先ほど、日本は直間比率において法人税のウエートが高いと、このようにおっしゃいました。また、それは法人税の間接税化が行われているということについて少しお話しされたように思いますけれども、いま一つ詳しくお話しいただけませんか。
○参考人(今井勝人君) 法人税のウエートが高いから法人税の間接税化が行われているということではございませんで、もともと法人税というものの理解の仕方に間接税としての性格もあるんではないだろうかというそういう研究もございますと、そういうことを申し上げたわけでございます。
 この点は非常に難しい問題でございます。法人税が本当に法人あるいは株主の負担している税なのか、あるいは製品価格等を通じて消費者に転嫁されている税なのかということを判断する決め手は実際問題としてはないんではないかというふうに考えられます。しかも、実際いろいろ財政学者の方がアメリカや日本を例にとりましていろいろな推計をされておりますけれども、その推計の幅も相当幅がございまして、まだ定説といったようなところまではいってないんではないかと考えられます。
 ただ言えることは、非常に抽象的な理論のレベルで考えますと、法人税も転嫁している、少なくともその一部は転嫁していると考えた方がいいのではないかという研究が進んでいるということでございまして、割にこの考え方は多くの先生方がお持ちではないかと思っております。そうしたときに、もし法人税がそういうぐあいに転嫁をしているというふうに考えますと、日本の間接税のウエートというのは見た目よりももう少し高くなるだろうという指摘を先ほどしたわけでございます。よろしゅうございましょうか。
○古川太三郎君 それは法人配当益金不算入制度とか、あるいは物品税の庫出税とか、そういったものにもかかわってくる問題でございましょうか。
○参考人(今井勝人君) お答えいたします。
 いろいろな側面に絡んでくるかと思います。特に法人税のあり方をどういうふうにするかということについてはそこのところはポイントになろうかと思いますが、しかしながら先ほど申し上げましたように、どれだけ転嫁しているかということを決めることが事実上不可能でございますから、なかなかそれを根拠にして逆に法人税のあり方を考えていくということは相当しんどいだろうというふうに私は正直申し上げて考えております。
 ただ、法人税のあり方に関連して一言申し上げておきますれば、法人税がもしそういう性格を持っているといたしましても、私は法人税の課税ベースの拡大というようなことはぜひやっておく必要があるというふうに思っております。それは法人税が転嫁しているかどうかということと絡みますけれども、一回それをやった上でもう一度法人税の仕組みを考え直すというふうに手順としてはいくべきではなかろうかと思っております。
○古川太三郎君 土井参考人にお聞きします。
 大土地保有税というのは連合さんの発案だと聞いておりますけれども、この税制は税体系そのものについて考えていらっしゃるのか、あるいはまた、土地政策という意味からの税制、税制からの土地政策というような考え方でいらっしゃるのか、そのあたりを少しお聞かせいただきたいと思います。
○参考人(土井隆史君) お答えいたします。
 私は両面あると思います。先ほど申し上げましたように、税というものはやはり経済社会の動きにこれは合わせていかざるを得ないわけでありまして、四十年、五十年前は所得税もほとんどなかったというふうに聞いております。
 私どもは、昨今の問題というのは資産格差の問題というのが社会的に非常に大きな問題になってきている、そういう中でこの土地に対して税というものが土地政策の中で極めて大きな位置を占めるのではないか。そういう意味で、この双方をもって大土地保有税を掲げているということでございます。これは先ほど申し上げましたように、社会的な有限な資源について一定の還元をしていこうという意味で、やっぱり保有に対してそれなりのコストをかける、そしてそのコストが税でなければ、今度は逆に言えば生産活動でありあるいはそこから利潤を得てまた別の税を払う、こういうようなことだと思います。
 しかしながら、ちょっとお断りしておきたいのは、私どもはこれはすべての土地ということじゃなくて、やはり居住する土地でありますとか、先ほど申し上げましたように有効に利用しているもの、こういったものには思い切った減免をしていくべきではないか。反対に未利用でしかも大規模な土地が遊休で寝ている、こういうものに思い切って課税をしていくべきではないかという観点に立ちまして、大土地保有税を提案しているわけであります。
 以上であります。
○古川太三郎君 それでは、税理士さんでいらっしゃる大島参考人にお聞きしたいと思いますが、またこの消費税が必要だというお立場であるためになおお聞きしたいと思うんですが、自民党では大きな見直しをするということで、我々は生活必需品だとかあるいはそういった衣料品というものに大きな期待をしておりましたけれども、食料品についての少々の手直しだけに終わりました。この点については非常に残念でございますが、一番国民の多くの方々が手直ししてほしいと、またこの消費税では絶対手直ししなければいけないんだというような免税業者、あるいは簡易課税制度、あるいは限界控除制度の問題について投書がございますので、ちょっとこのことが本当にあり得るのかどうか、お聞かせ願いたいと思います。
 朝日新聞のこれは十月二十七日の投書でございますが、四月から八月までの五カ月間にいただいた消費税は四十七万円余りでありますが、実際に納税するのは売り上げ総額の〇・六%なのであります。九万七千円でよいそうです。余りに差があり過ぎるので税理士に相談したら、税法の条文をいろいろと調べられながら、もっと安くなりますよと言います。二万八千五百円でよいということです。限界控除というのがあるのです。不安に思
いながらも、言われるまま用紙に記入して税務署に持参しましたが、これでよいと言われ、しかも経費として落としてよいと言われました。消費者の皆様から四十七万円の消費税をいただきながら、実際の納税額は二万八千円。その差の四十四万円は今さら皆様にお返しする方法もなく、結局私のもうけとなったわけです。五カ月間のもうけですから、一年間では百万円以上の収入増となります。長年自民党を支持してきた私としては、自民党が我々零細業者に不利なことをするはずはないと信じてきましたが、やはり裏道をつくってくれていました。反面、こんな不合理なことでよいのでしょうか。社会の不公平がますます増大するばかりではないかといささか良心の苛責に責められている納税日でした。
 このようになっておりますけれども、制度としては、やはりこういう限界控除制度がある以上は、本来なら四十七万円をそっくり納税しなければならないものが二万八千円、あるいはそれも経費で落としてもいいというような状態にあるというのでございますけれども、本当にあるのでしょうか。
○参考人(大島隆夫君) 限界控除なり簡易課税、免税点、先ほども申し上げましたように、業者の利益になる面があることは否定いたしません。それがどのくらいの大きさになるかということは、これはその人の具体的な数字を見ませんと何とも判断いたしかねますので、具体的な話についてはお答えは控えさせていただきますけれども、ただやや疑問に思いますのは、限界控除というのはその年の所得を基準にして決めるわけでございますから、まだ限界控除を適用してどうなるというようなことにはこれはならないんじゃないか、どこか間違っているんじゃないかとそこはそう思います。
 それから、免税点制度は、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、消費者の利益になっている面もあるということを忘れないでいただきたい……
○古川太三郎君 そんなことは聞いていません。
○三治重信君 参者人の皆さん方には大変御苦労さまで大分お疲れのことと思うんですが、簡潔にお尋ねを申し上げます。
 まず最初に、土井参考人さんですが、源泉と申告の不公平の是正でいろいろおっしゃったんですけれども、番号制、それから執行面での何というんですか是正という中で、そういうことでもなお源泉と申告の不公平というものはなかなか直らぬだろうと思うんですが、その根本的な原因は何だとお考えになるか。
 それと、それから消費税を高齢化社会のためにやるんだやるんだとこう言っていながら、消費税をやってすぐ年金の保険料を上げる医療費も上げる、こういうことをやっていると何のために高齢化社会に対する対応を政府は言ったのかということで労働組合の幹部の皆さん方は非常に反対をされているだろうと思うんですが、やはりこういうふうな高齢化社会なり社会保障にやると言って掲げた税金を本当に社会保険の方との関連を考えずして、全然もう厚生省は考えてないですよね、五年たつから料金改定だ、三年たつから医療費の改定だとこういうことをやっているんですが、こういうことについてどうしたらそこの間の調整というんですか、できるとお思いになりますか。
○参考人(土井隆史君) お答えいたします。
 源泉徴収納税とそれから申告納税の差というのは、やはり一つは申告納税制度というのがシャウプ税制の基本でございますから、まずこれをきちんとやれる体制というのが何にも増して私は重要なんではないかと思います。そして、私どももう一つは、この税制というのがシャウプ税制の導入以降政治の力学の中で、ある部分に偏って、さまざまな優遇措置といいうものが課税ベースを浸食してきたということに非常に大きな問題があるんではないかと。そういう意味で、やはり税制を決める一定のルールというものをぜひ国会につくっていただきたい。そういう意味で、私どもは税制の基本構想あるいは税制基本法を制定していただきたい。
 私どもは、どうも税制に対して労働組合もそれなりに減税の要求を出しますが、反面にはある意味で矛盾も実は感じているわけであります。というのは、ある部分で有利な税制というのは、他から見ますとこれは不公平になってくるわけであります。今までの税制改正というのはその繰り返しで、これは東大の宮島先生がおっしゃっていたんですが、大変スパイラル化してくると。そういうような形なんですね。これはどういうことかといいますと、税というのが必ずしも一定のルールの中の改正ではなくて、これは国会が機能していないとかそういうことじゃないんですけれども、やはり税というのが常に個別税目を少しずつ少しずつ直していった歴史なんじゃないかと私は思います。
 したがって、税というのは先ほど皆さんもこれはおっしゃっていたんですが国の屋台骨ですので、やはり思い切って見直すときにはその方向、骨太い基本路線みたいなものを掲げていただくと。そういう意味では、やっていただけば国民というのはある程度細かい部分には納得をしていけるんではないかと思います。そうでないと、やはり自分の主張を通していかないとほかの方で曲げられるのではないかという危機感といいますかそういうものがあって、ついつい業界でありますとかが圧力団体化して、個々に個別の優遇措置を望んでしまうということが私は多々あると思います。そういう意味で、私ども基本構想というものをつくって骨太くやっていただきたい、そういうことを思っているわけであります。
 それから、二つ目の高齢者の問題でございますが、私どもは常に福祉社会というものが、これは当然裏に財源があることは百も承知しておりまして、まさにそれがなければできないわけでありますが、常に財政優先といいますか、そういうことが強過ぎるんではないかと。これはもうどのサラリーマンだろうが事業者だろうが、皆さん本当に一生懸命働いて日本の経済をこれだけ豊かにしているわけでありまして、リタイアとまではいきませんけれども、ある程度年をとってそれなりになったら少しゆっくりして楽しい余生をと思うわけでありますが、これだけ経済が大きくなっているにもかかわらず、そういう展望が見えてこない。出てくるのは常に財政が逼迫をする、こういう繰り返しなわけですね。しかし、片やその資産というのはアメリカが四つ買えるぐらいになってきている。こういうアンバランスがあるわけでありまして、そういう中で、じゃ料率を上げよう、税制を直そうと言われましても、我々は単にそこで信用ができない。大変これは不幸なことだと思います。
 ですから、やはりそういう面では私どもは、経済をこれだけ大きくしてきたこういった努力が老後できちんと報われるような、そういう明るいビジョンを出していただいて、こういう負担をどうするんだとそういうビジョンをもっと広く国民にわたって出していただきたいと思うんです。ややもすると財源ばかりが出てくる。そして、じゃ税制をどうするんだ、もう消費税しかない、この消費税がいいか悪いかとこういう議論になってきますから、そこに高齢化の展望も何も見出せないわけであります。そういう意味で、私は高齢化社会というものを論ずるのであれば、まず高齢化社会のビジョンをきちんと示していただいて、そしてその負担のあり方についてこれはけんけんがくがくの意見を交わすんだと、こういうことがあればかなり国民も税制に注目し、細かい部分については代議士の先生の諸氏にかなり全幅の信頼を持ってお任せできるのではないか、こういうように思います。
○三治重信君 ちょっとくどいようなんですが、高齢化社会に対しての負担が今のところ、おっしゃったのは税の関係なんですが、税と社会保険料の、負担においては同じだけれども、税のほかの社会保険料なり医療費の負担との関係をちょっと御意見を伺いたいと思います。
○参考人(井上隆司君) 私は余りその分野は専門でないんでお答えになるかどうか実はわかりませんけれども、ここで私ども一つ考えなければいけ
ません。私はサラリーマンの代表として出てきておるわけでありますが、サラリーマンもさまざまな階層が実はあるわけでして、先ほど申し上げましたように、国税庁の民間給与の実態というものの六十三年分が十月初めに出ておりますけれども、そこで見ていただくとわかりますように、年収五百万以下、これは給料、ボーナス、それから時間外手当、さまざま入れて五百万円以下の方が七五%なわけですね。そういうのが実態だと思います。
 おのおの高齢化に対して、例えば東京の一部上場の丸の内の会社の方でしたらそれは企業の年金もあるでしょうし、個人でもかなり蓄えがおありになる。しかし、各地方の中小企業で働かれる方というのはなかなかそういうものができない。そういうものを広い形でどう整合性を求めていくかということが、私ども非常に大切なんではないかと思います。そういう意味で、サラリーマン内での負担のし合いも必要かもしれませんが、まずやはり国庫というものがある一定部分を負担していく。その上にいわゆる社会保険料がくるのではないか、そういうふうに思うわけであります。
 現在国民負担率が三八%、税と社会保険料を足した分が三八%ということでございますが、税収のうちの十一兆が社会保険料関係でございます。したがいまして、歳入のあるいは歳出の内訳をもっと見直せば、逆に社会保障関係がもう少し拡充できる可能性もなきにしもあらずだと私どもも思っております。
 そういうようなさまざまな複合を考えながら、やはり基本は国庫負担で老後保障の方も基本部分はやっていくべきだと。その上に保険料、そして次に自律的ないわゆる自助努力というものが必要なんではないかと考えております。
○三治重信君 次に、大島参考人と山口参考人と同じ質問なんですが、お二人のきょうの陳述を聞いていると、どうもお二人の関連からいくというと感じとして現行の消費税でちっとも悪くないじゃないかというふうな感じなんです。そうすると、自民党が今度消費税の見直しをやったのはこれは完全な選挙対策だ、こういうふうにお感じになるのかどうか。
○参考人(大島隆夫君) 私は、現在の消費税はいろいろ問題があるかもしれないけれども、それは一つの整合性を持った体系だと思っております。
 ただ、物事にはすべて長所と短所があるわけでありまして、整合性があるからといっても、これを欠点の方から見ればこれは問題点がないというわけではない、これはもう当然のことでございます。物事はすべて長所と短所がございます。ですから、その短所の方につきまして、短所の方の面から物を配慮する。それから、あるいは先ほど申し上げましたように、弱者の保護としては既に十分なことになっているわけなんですけれども、さらにそれに上積みをしてやるんだということ、これは私、少しも選挙対策というようなことではないと思います。
 それからもう一つ、先ほどお答えがいかなかったんですが、簡易課税制度については、私も申し上げましたように、これは多少金額も大きいので見直す余地があるということ、これははっきり見直し案でも言っておりますけれども、これの一つの布石といたしまして税率、税率というか仕入れ率ですね、九〇%と八〇%、あれは政令でやるんだという条項を一つ入れたということ、これは非常に大きな意味があると思います。
 以上でございますが、なお一つ、大変申しわけありませんが、先ほどの消費税が経費に落ちるというのは、これはもうはっきりした間違いでございますので、恐縮ですが補足さしていただきます。
○参考人(山口令子君) 断定するわけではございませんけれども、消費税の見直しというのがかなり今度の選挙を意識したものであるという感じを私自身は受けております。
 ただ、逆に言いますと、この野党の代替案もこれがうまくいかなければ今度の選挙にかなり大きく響くのではないかという面でも同じような気がいたしまして、その意味で選挙と税制というものがかなり絡んできたと、まあずっと過去ですね。ということが構造的に言って大きな問題ではないかと思います。
 それから、私が結果的に消費税の方をどちらかというと賛成だと言うのは、消費税が必ずしも一〇〇%パーフェクトだと言うつもりは全然なくて、ただ、トータルに相対的に見ますと、この再改革基本法案の方が具体性を欠くという点において比較をする上でマイナスにならざるを得ないということがございます。ですから、ぜひともその具体性をもっとはっきり出していただいて、私たちもよくよく検討できるような形にしていただきたいと思います。
○三治重信君 どうもありがとうございました。
 最後に、今井参考人にごく簡単にお答え願いたいと思うんですけれども、先生の理論からいくと消費税と地方税との関係、殊に地方財政の安定との関係はどういうふうになるんでしょうか。
○参考人(今井勝人君) お答えいたします。
 地方財政特に地方税ですが、地方税と消費税との関係については考えるべき点が私は二点あるかというふうに思っております。一つは、先ほど来問題になりました消費税に伴い地方財政がどういう影響を受けるのか、それの財源措置が一体どうなっていくんだろうかという問題が一点でございます。それからもう一点は、消費税と個々の地方税の中で、特に私は事業税との関係をやはり議論しておく必要があろうかというふうに考えております。
 前者の問題につきましてはなお詳細な検討が必要かというふうに私自身思っておりますが、後者の点につきまして一言申し上げますと、長年地方団体は事業税の外形標準化ということを要求してきたわけでございます。地方団体といいましても、これは都道府県の税でございますから都道府県ですが、外形標準化ということを検討し、なおかつそれをいろいろなところで要求していたかというふうに私は理解しております。私自身も事業税の外形標準化ということは基本的な方向として賛成しておりまして、そういう立場からいたしますと、今回導入されました消費税というのは事実上事業税の外形標準化という道をふさぐことになってしまうのではないかというふうに考えております。
 で、それはなぜ問題かといいますと、私自身はやはり地方税のウエートをもっと高める、都道府県、市町村のいわゆる自主財源のウエートをもっと高める必要があるというふうに考えておりますが、その一つの手段として事業税の外形標準課税ということを考えたときには、その地方税のウエートを高めていく、自主財源のウエートを高めていくという道が閉ざされてしまうのではないかということを考えているわけでございます。
 以上でございます。
○横溝克己君 私が最後の質問ということになりますが、時間が五分間なのでひとつよろしくお願い申し上げます。
 最初に山口参考人にお聞きしたいんですけれども、先ほどのお話の中に、消費税の導入に関してなのかあるいは四野党のお話に関してなのかわかりませんけれども、税金の使い方がはっきりしていないというお話がありましたのですけれども、まあこれは税額にもよると思うんですが、具体的にはどのようなことをお考えになっているのでございましょうか。
○参考人(山口令子君) これはもう本当に私の体験なのでございますけれども、例えば各省庁でなされている仕事をかいま見る機会がございます、あるいは各種研究会などに出席さしていただくこともあるんですけれども、例えばそういう研究会で出されたような結果が果たしてどういう形で利用されているのかというものを考えますと、何かほとんど利用されていないような状況の研究会もたくさんあるように見受けられます。これは本当に小さな例でございますけれども、普通の企業ですとそういうことをやっていては、大きなところは別として小さいところですと本当につぶれていってしまうような税金のむだ遣いというのが私がちょっと見ただけでもある。あるいは地方でも
あるのではないかと思うんですね。
 そういったことも含めて、恐らく小さなところで税金の使われ方を見ていると、ひょっとするとむだ遣いが多いのではないかと思う人も多いんですけれども、現実に税金がどのような形で使われているかということの情報公開というものが余りなされていないという感じがすることを申し上げました。
○横溝克己君 ありがとうございました。
 それでは土井参考人にお願いしたいんですが、先ほどからありますように、いろんな所得の捕捉のためには納税者番号制度の導入が必要であるということを言っておられるんですが、ちょっとこう考えますと、少し所得の捕捉に重点が置かれ過ぎているのではないか。もう一つ、デメリットも非常にあると思うんですけれども、どうやってそういう人たちに対して説得していくかとか、何かそういうようなお考えはございますでしょうか。
○参考人(土井隆史君) 現在、例えば我々サラリーマンは源泉徴収でもう所得は捕捉されているわけでありますし、例えばクレジットカードで買い物をすればその買い物のすべてが捕捉をされている。私ども、納税者番号制度、確かに自分の財布の中身をのぞかれるというのは皆さん大変気分は悪いことかもしれませんが、ある意味ではもうそういう時代に入っていると。そして、これから例えば年金なんかでも拠出と給付ということを考えますと、その管理には何らかの、やはり管理の手法だと私ども思っているわけであります。
 したがいまして、そういうものが現在いろいろ使われて管理されているものを統一してそれを行っていく。私ども、納税者番号制度には当然のことながらそういう社会給付のようなものをセットしていく、アメリカのいわゆるソーシャル・セキュリティー・ナンバーのような機能を求めているわけであります。
 昨年、政府税制調査会の調査団がアメリカ、ョーロッパへ行ったわけでありますが、その中で私どもからもアメリカに調査に行きましたところ、いわゆるプライバシーという意味ではむしろ戸籍だとかそういう方がよほどプライバシーの侵害じゃないかというのがアメリカの方の感覚だったというふうに私聞いておりますが、私ども先ほど申し上げましたように、サラリーマンの中でもかなり誤解のある部分はあると思いますが、現実私どもいろいろな社会の資源といいますか、そういうものを受けて経済活動をしてそれなりの収入を得ている、それから拠出してまた給付を受ける、こういった一連の循環というものはもはやある程度きちんと管理をしてそれなりの責任を果たしていくという時代に私は来ていると思います。
 そういう意味で、我々は労働組合というものを通じながら、地道にといってもそう時間をかけていられないと思いますが、きちんと説得をしていきたい。ある意味では、もうサラリーマンの場合には納税者番号制度が現実にはついているようなものであります。そういうようなことを一つ一つ自分の身の回りに置きかえて理解を求めるような運動をしていきたい、そういうふうに考えております。
○横溝克己君 もう一間質問したいんですけれども、関本参考人にお願いしますが、先ほどちょっと聞き漏らしたかもしれないんですけれども、消費税を廃止しても財政的には減少をカバーできるというようなお話をちょっと聞いたんですが、その点はどのようになっておりますでしょうか。
○参考人(関本秀治君) お答えいたします。
 先ほど申し上げましたのは、現時点では自然増収が昨年度も一昨年度もいずれも当初予算に比べますと七兆円を超える額であったというふうに記憶しております。したがいまして、消費税を廃止いたしましても今すぐ財源に困るというものではない、こういう趣旨で申し上げたわけです。
 なお、これはあわせて他の支出項目あるいは不公平等の是正をすればもちろんこれを補てんしてなお余りある財源があるということでございますけれども、合意を得られない場合、その間は自然増収をそれに充てることは十分可能でありますし、過去におきましても、減税が自然増収で賄われたという例は何回もあるわけでございますから、あえてそれを否定することはないであろう、このように考えます。
○委員長(中村太郎君) 以上で参考人に対する質疑は終わりました。
 この際、参考人の方々に一言御礼を申し上げます。
 皆様には、長時間にわたり有益な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして心から厚く御礼を申し上げます。
 九案に対する本日の審査はこの程度といたします。
 次回の委員会は明七日午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後五時四分散会


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第116回国会 税制問題等に関する特別委員会 第14号 平成01.12.06
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第108回国会 予算委員会公聴会 第1号 昭和63.03.19