国会 公聴会


第131回国会 地方行政委員会,大蔵委員会連合審査会公聴会 第1号 平成06.11.21
第116回国会 税制問題等に関する特別委員会 第14号 平成01.12.06
第112回国会 予算委員会公聴会 第2号 昭和63.02.16
第109回国会 大蔵委員会 第7号 昭和62.08.27
第108回国会 予算委員会公聴会 第1号 昭和63.03.19


第112回国会 予算委員会公聴会 第2号

二月十六日
 浜田幸一君委員長辞任につき、その補欠として
 奥田敬和君が議院において委員長に選任された
 。
──────────────────────
昭和63年2月16日(火曜日)
    午前10時開議
 出席委員
   委員長 奥田 敬和君
   理事 近藤 元次君 理事 野田  毅君
   理事 宮下 創平君 理事 山下 徳夫君
   理事 上田  哲君 理事 村山 富市君
   理事 池田 克也君 理事 吉田 之久君
      愛野興一郎君    伊吹 文明君
      池田 行彦君    稲村 利幸君
      上村千一郎君    柿澤 弘治君
      倉成  正君    小坂徳三郎君
      後藤田正晴君    左藤  恵君
      佐藤 信二君    佐藤 文生君
      志賀  節君    田中 龍夫君
      西岡 武夫君    林  義郎君
      細田 吉藏君   三ツ林弥太郎君
      村田敬次郎君    井上 一成君
      上原 康助君    川崎 寛治君
      菅  直人君    佐藤 敬治君
      辻  一彦君    坂口  力君
      冬柴 鉄三君    水谷  弘君
      宮地 正介君    田中 慶秋君
      楢崎弥之助君    中路 雅弘君
      中島 武敏君    正森 成二君
 出席公述人
        筑波大学教育学
        系教授     黒羽 亮一君
        軍事ジャーナリ
        スト      前田 哲夫君
        東京大学経済学
        部教授     貝塚 啓明君
        立教大学経済学
        部教授     和田 八束君
        東京理科大学理
        工学部教授   石原 舜介君
        
税経新人会全国
        協議会理事長  関本 秀治君

 出席政府委員
        総務政務次官  熊川 次男君
        北海道開発政務
        次官      上草 義輝君
        防衛政務次官  高村 正彦君
        経済企画政務次
        官       臼井日出男君
        国土政務次官  大原 一三君
        外務政務次官  浜田卓二郎君
        大蔵政務次官  平沼 赳夫君
        大蔵省主計局次
        長       篠沢 恭助君
        大蔵省主計局次
        長       寺村 信行君
        文部政務次官  船田  元君
        厚生政務次官  長野 祐也君
        農林水産政務次
        官       北口  博君
        通商産業政務次
        官       浦野 烋興君
        運輸政務次官  久間 章生君
        郵政政務次官  白川 勝彦君
        建設政務次官  古賀  誠君
        自治政務次官  森田  一君
 委員外の出席者
        予算委員会調査
        室長      右田健次郎君
    ─────────────
委員の異動
二月十六日
 辞任         補欠選任
 小此木彦三郎君     伊吹 文明君
  砂田 重民君     柿澤 弘治君
  寺前  巖君     中路 雅弘君
  矢島 恒夫君     正森 成二君
同日
 辞任         補欠選任
 伊吹 文明君     小此木彦三郎君
  柿澤 弘治君     砂田 重民君
    ─────────────
本日の公聴会で意見を聞いた案件
 昭和六十三年度一般会計予算
 昭和六十三年度特別会計予算
 昭和六十三年度政府関係機関予算
     ────◇─────

○奥田委員長 どうもありがとうございました。
 次に、関本公述人にお願いいたします。
○関本公述人 税経新人会全国協議会の理事長をしております関本でございます。
 私は、昭和六十三年度の総予算案に反対の立場から意見を述べさせていただきたいと思います。
 現在、政府税調及び自民党税調におきまして税制の抜本的改革についての御議論が行われているわけでございますけれども、政府税調は今月の八日から全国各地で公聴会を開催しておられます。しかし、昭和六十三年度の予算案並びにその基礎となっております昭和六十三年度の税制改革に関する法案には、この税制の抜本的改正に関する問題は全く含まれておりません。現在、国民各層が切実に求めておりますのは、課税最低限の大幅引き上げを中心としました勤労者に対する大規模な所得減税でございます。
 ところが、昭和六十三年度の税制改正に関する法律案の中には、この切実な国民の要望にこたえるものは全くございません。減税は来るべき税制の抜本的改革、これによる大型間接税導入のためのいわば人質とされてすべて先送りされております。この点をまず御指摘しておきたいと思います。
 昭和六十三年度予算案の特徴の一つは、アメリカの要望に沿いまして軍事費を総額三兆七千三億円と大幅に増額させた点にございます。これは昨年に続きましてGNP比一%枠を突破するものでありまして、六十二年度の一・〇〇四%を大幅に上回り一・〇一三%に達しております。前年度比の伸び率で言いますと五・二%増ということになっておりますけれども、六十三年度は売上税の上乗せ分がございませんし、為替レートも六十二年度に比べまして大幅に円高となっている、こういうことを考え合わせますと実質六%を上回る伸び率となることは確実でございます。また、新規発注に伴う後年度負担も約二兆六千億円と実質七・六%の増加となっております。
 この中にはアメリカの空母を護衛すること、これだけが目的でありますイージス艦、同じくアメリカのレーダー網を補完するものとしてのOTHレーダー、これらの導入などが含まれております。これらはいずれも専守防衛という立場からも説明のつかないものでございまして、米極東戦略の一翼を担う軍拡であることは一見して明らかでございます。
 さらに、発展途上国への経済援助である政府開発援助、いわゆるODAも七千十億円となっており、財政投融資を含めた事業規模では一兆三千四百八十七億円に上っております。これをドルに換算しますと実に百億ドルに達するわけでありまして、アメリカの八十八億ドルを超えて世界一の援助国、こういうことになろうとしております。これはドルベースで換算しますと前年度比三〇%以上の増加率となります。ここにも竹下総理の対米公約であります「世界に貢献する日本」、この面目躍如たるものがございます。これもアメリカ戦略を支える重要な一環でありまして、国民には何ら利益をもたらさないものでありまして、逆に大企業の海外進出を促進し、産業の空洞化をもたらす一因となるものでございます。
 これに対して社会保障関係費は大幅に抑制されております。年金受給者数の増加などによります当然増七千億円も認められないで、四千億円以上がカットされ、社会保障給付の水準を一層低下させるということになります。また、国民健康保険制度についての改悪が図られております。国庫負担を四百五十億円削減して、新たに都道府県、市町村に対して六百九十億円の負担増が押しつけられようとしております。さらに、生活保護費、児童扶養手当なども純減となります。生活苦で餓死者や自殺者が続出しているというのに、最後のよりどころであります生活保護費までも削減するということは、憲法二十五条が保障する生存権を奪うことになるのではないかと考えるわけでございます。
 昭和六十三年度予算がこのような重大な状況を生み出すことになろうとしているにもかかわらず、政府は、我が国の社会保障などの公共サービスが充実して、福祉水準は世界のトップレベルに達しているかのような宣伝をしております。これは全く事実に反するものでありまして、従来でさえ劣悪であると言われておりました福祉の水準が、最近の健康保険や年金制度の改悪、老人医療の有料化、昨年の百九国会における公害健康被害補償法改悪、国立病院の統廃合、労働基準法の改悪などによって一段と低下しまして、今回の昭和六十三年度予算案並びに関連法案によりましてさらに一層改悪されようとしているのが実情でございます。
 教育についても例外ではございません。臨時教育審議会答申に基づきます教育改革の一環としまして教員の統制強化、初任者研修試行、奉仕等体験学習研究推進、産業教育の振興、産業界等との研究協力の推進等々に関する予算が大幅に増額している反面、四十人学級推進は遅々として進んでおりません。そのために欠かせない公立学校施設整備関係費は九・七%も削減されております。国立大学の授業料が大幅に値上げされることになるとともに、私学助成も不十分な状態が続いているために入学金や授業料の値上げが相次いております。
 我が国の教育環境がいかにひどいものであるかの例といたしまして、先進諸国の学級編制基準と比較してみますと、次のとおりでございます。初等教育で、日本が一学級四十五人、これに対しまして、アメリカ、カナダ、フランス、西ドイツなどがいずれも二十五人、イギリス二十五人ないし三十人でございます。中等教育で見ましても、日本の四十五人に対しまして、アメリカ、フランス二十五人、カナダが八人ないし三十一人、西ドイツは三十人、イギリス二十五人ないし三十人となっておりまして、我が国のすし詰め学級ぶりは一目瞭然でございます。
 いわゆる内需拡大の対米公約の実行と財界の要求にこたえるための公共事業関係費は、NTT株売却益が繰り入れられます産業投資特別会計からの一兆二千億円を加えまして約七兆三千億円と昭和六十二年度の予算に比べまして一九・七%の伸びとなっているほか、大企業向けにはいわゆる構造調整や新技術開発のための特殊法人設立の費用が増額あるいは新設されておりまして、産業の空洞化を財政面から支えるための助成金、特定業種雇用安定助成金制度の創設などが提案されております。これに対しまして、円高、消費不況に悩む中小企業に対する対策費は、六年連続の削減で、一般会計予算に占める割合はわずか〇・三四%と史上最低に落ち込んでおります。
 このように、昭和六十三年度予算は、歳入面では、昨年の税制改革によりますマル優原則廃止、一律二〇%の分離課税の導入、課税最低限の据え置き、最高税率の引き下げを中心としました税率の改定、措置法の期限切れによります法人税率の一・三%の引き下げなど、大企業、大資産家に対する減税によりまして負担の不公平を一層拡大しているものでありますとともに、歳出面では、軍事費、政府開発援助などの異常突出、大企業中心の公共投資などの大幅増、社会保障、教育関係支出の削減など、歳入歳出の両面から勤労国民の生活を破壊して、大企業、大資産家に対する優遇を拡大するものとなっております。これは同時に、日本のアメリカへの従属をますます深めさせるとともに、産業の空洞化を促進し、円高、消費不況のもとで呻吟する勤労者、中小零細企業など、勤労国民の生活を破壊する予算案であるというふうに考えざるを得ません。
 そもそも、財政は、税の徴収と歳出の両面を通じまして所得の再分配を図る、これが本来の機能でありますけれども、近年の不公平税制の拡大、歳出面における福祉の切り捨てなどによりまして、その本来の任務に反する方向へ変質させられつつあるという点を強調しておきたいと考える次第でございます。
 現在、政府税調では、竹下総理の諮問を受けまして、税制の抜本的改革についての審議を進めておられるわけでありますが、そこでは、先ほどから申し上げておりますような実態がほとんど顧慮されておりません。
 なぜそうなのかと申しますと、政府税調の委員の選任、審議のあり方、ここに根本的な問題があるわけでございます。建前上は民間、国民の各層の意見を聞くということになっておりますけれども、実際には政府の意向に同調する人々が圧倒的な多数を占めておられるわけでありますし、その審議は全く非公開、密室審議でございます。大蔵省の用意した資料に基づいて政府の方針に承認を与えるだけの儀式にすぎない、こういうことでございますので、これでは、開かれた議論を通じてというふうに言われましても、本当に国民的な税制改革論議というものは不可能でございます。
 現在進められております地方公聴会についても全く同様でございまして、政府が選んだ公述人の方々が大蔵省や自治省の用意された資料に基づきまして一方的な意見を述べておられるにすぎないわけでありまして、結論は初めから決まっているようなものでございます。
 政府は、税制の抜本的改革の背景としまして、日本の所得水準は世界のトップクラスになったとか日本は世界一貧富の差の少ない国であるとか、こういうことを挙げております。だから、高齢化社会に備えて薄く広くの考え方を持つ税が必要であり、それが現代的な公平を実現するための最も適切な選択であるという趣旨のことを盛んに宣伝しておられます。また、日本の課税最低限も世界で最も高い水準になっていると言っておられます。これらはいずれも事実に反するものでございます。所得水準や課税最低限の数値というのはつくり出されました異常円高によって計算上押し上げられているということにすぎませんし、貧富の格差も最近の財テクだとか土地転がしなどによりましてますます拡大しているのが実情でございます。
 我が国におきましては、住居費や教育費が異常に高くて、これが生活を著しく圧迫しているということを度外視することは公正ではないと思います。世界のトップレベルの所得水準にある日本人の大部分がなぜウサギ小屋にしか住めないのか、この一事だけを見ても、所得水準が世界一流であるというのは単なる神話にすぎないということが容易に理解されるはずでございます。特に、薄く広く負担を求める間接税というものが導入されましてこれによって福祉財源が賄われるとしますと、この税は社会的弱者に、より重い負担を強いるものでございますから、社会的弱者同士を助け合わせる結果になりまして、憲法が予定しております福祉国家とは似ても似つかない状態が出現することにならざるを得ません。
 薄く広く負担を求める大型間接税は昭和六十三年度予算並びに関連法律案には直接関係がないということになっておりますので、これ以上申し上げることは差し控えたいと思いますが、ただ、今国会における質疑や政府答弁、総理の演説などを承っておりますと、ことしの秋を目途としまして新大型間接税の導入を含む税制の抜本的改革を断行することを予定しておられる模様でございますので、もしそのようなことになりましたら、これは、一昨年七月の衆参同日選挙における大型間接税は導入しないという公約に違反するものであるということだけは明確に申し上げておきたいと思うわけであります。
 次に、本委員会においても御議論になりました外国為替資金特別会計に関連して意見を述べさせていただきたいと思います。
 昭和六十三年度特別会計予算案総則第十条によりまして、外国為替資金の融通証券発行の最高額を二十八兆円に増額することが予定されております。昭和六十二年度当初予算では十六兆円でありましたけれども、二度の補正によりまして現在二十一兆円になっております。これ自体大変な大きなものでございますけれども、二十八兆円ということになりますと、これは昭和六十三年度一般会計予算のほぼ半額に匹敵する額でございます。これが外為市場でドル買い、円売りの介入をするための資金源でありまして、竹下総理が先般訪米された際の手土産でもあったわけであります。先月十三日の日米首脳会談で合意しましたアメリカのSDRを日本が買い受けることによって、アメリカがドル買い、円売りの介入資金を調達する、このためにも使われることになります。アメリカ経済が財政と貿易の双子の赤字によりまして大変な危機に直面しておりますが、最近のドルの著しい下落によりまして民間の資金がアメリカからどんどん逃避しております。そのために危機を一層深めているというのが実情でございまして、その肩がわりをしているのが日本、ヨーロッパ、カナダなどの政府資金でございます。このようないわゆる経済協力は日米安全保障条約第二条によるものであることは明らかでございます。
 アメリカは、レーガン政権による急激な軍拡政策と無謀ともいえるような大企業、大資産家に対する減税によりまして、財政赤字を急速に拡大し、今日の危機をつくり出してきました。しかし、日本政府を初めとする西側諸国が、米短期財務省証券、いわゆるTBでありますが、これを購入することによって赤字の穴埋めをしているために、アメリカ財政の自律的な改善が先延ばしされまして、危機はますます深刻なものとなりつつあります。
 大蔵省は、このアメリカの財政赤字の穴埋めとドル買い介入によるドルの下落防止のために、外国為替資金証券いわゆる為券を発行しまして、これを日銀が引き受けるということによって資金の調達をしております。そのために円が国内に大量にばらまかれまして、マネーサプライを引き上げ、過剰流動性を生み出す結果になっているわけであります。これは、効果としては、財政法が禁止しております国債の日銀引き受けと同一ではないかというふうに考えられまして、これが我が国にインフレの危険性を生み出すであろうということは容易に推測できるわけであります。
 さらに、外為特会は、下落する一方のドルを盛んに買い支えているわけでありますから、ドルの下落に伴って為替差損を拡大していくわけであります。この為替差損は、一ドル百四十四円で換算しまして、昭和六十二年度末予定額が六兆円を超えております。昭和六十三年度予算では、為替差損は見込んでおりませんけれども、二十八兆円規模の介入を行うわけでありますから、その差損はさらに数兆円増加することは避けられないというふうに考えられます。しかも、外国為替資金特別会計法は、その八条の二項で、この為替差損を、損益計算書には計上しないで、貸借対照表の資産の部に計上することとしております。損益計算書上ではしたがって数千億円の利益を計上する、こういうことになっております。
 昭和六十三年度予算では、そのうちから外為特会受入金として一千四百億円を一般会計予算の歳入に計上しております。本来ならば評価損は利益と通算されまして、外為特会は積立金を取り崩しましてもなお昭和六十二年度末の予定額で一兆一千六百七十五億円強の損失となっているはずであります。しかも、最近の数年間は兆単位の損失を計上し続けているわけでありますから、今後ともこの損失が雪だるま式に累増することは避けられないのではないかと考えられます。
 このように、我が国の財政はアメリカの財政にリンクされておりまして、為替介入の強化というさきの日米首脳会談の合意によりまして、ますますアメリカへの従属を強めて、アメリカと一蓮託生の関係に追い込まれているといわなければなりません。
 以上のとおり、昭和六十三年度総予算は、我が国の将来を破滅に導きかねないような重大な問題を含んでいると考えますので、以上申し上げまして、私の公述を終わらせていただきたいと思います。

○奥田委員長 どうもありがとうございました。

○奥田委員長 次に、正森成二君。
○正森委員 まず関本公述人にお伺いしたいと思います。
 各公述人から直間比率の問題、税制改革の問題についてお触れになりましたが、いわゆる大型間接税に反対される方の御意見では逆進性と言われていることが大きな問題であります。大型間接税を実施している国における実態など、税理士さんとして御存じの点がございましたらできるだけ詳しく伺いたいと思います。
○関本公述人 各EC諸国のEC型付加価値税の負担率の実態等でございますけれども、これは多少古いものがございますが、塩崎潤先生が翻訳されました「付加価値税―ヨーロッパからの教訓」という本がございまして、今日社というところから出ております。
 これによりますと、フランスの、多少古いのですが一九七二年の統計でございまして、所得を八分位に分けまして、最低分位の方々の付加価値税の負担率が、当時は税率も高かったのですが、二二・一七%であるのに対して、最高分位の方々の負担率がわずかに五・四四。この間に約四倍の格差があるというような統計もございます。
 それから、これはEC型付加価値税ではございませんけれども、アメリカの州小売税につきまして、実は昨年の一月十四日にアメリカの民間団体でございます「税の正義のための市民」というところで発表しました「州税の残念な状態」という報告書がございます。これによりますと、これは新聞記事でございますので正確なところはわかりませんけれども、最下層の年収一万ドル以下の家庭ではこの小売売上税が三・一%、それから二万ドルから四万ドル程度で一・六%ないし一・九%、上に行きまして五万ドルから十万ドルになりますと、これが一・四に下がりまして、十万ドル以上の世帯では〇・七%、こういうような実態が出ております。
 なお、この間接税の増税と所得格差の関係につきまして、少し興味のある資料がつい最近の新聞に載っておりましたので、私持ってまいりましたが、これはイギリスのサッチャー政権のもとにおける所得格差の拡大ということで、一月七日の毎日新聞に出ておりました。
 これによりますと、サッチャー政権が発足した一九七九年と一九八五年の比較でございますけれども、所得階層を五分位にいたしまして、この間に最低の階層では所得が、収入と言っておりますが、平均収入が四三%も減少したことがわかった。これに対して、逆に所得が最も高い最上層の二〇%の家庭では、平均収入は一一%ふえた、こういうような発表がされております。
 ちなみに、この間に直間比率がどうなったかということを見てまいりましたら、七九年の統計はちょっと手元にございませんでわかりませんでしたが、八〇年の間接税の比率が四〇・八%でございます。これに対して八五年は四三・九%と、三・一ポイント上昇しております。つまり所得格差の拡大と間接税の比率の増大がまさに比例的に進んできた、こういうことがこの数字からわかるのではないかというふうに考えるわけでございます。

○正森委員 同じ関本公述人の御意見の一番最後の部分で、ほかの二人の公述人にもしおよろしければ伺いたいと思いますが、外国為替特別会計の問題が出てまいりました。
 これは円高・ドル安対策として大蔵省が外国為替資金証券というのを発行いたしまして、それを日銀引き受けで円を大蔵省に供給するという格好になりますが、その限度が予算総則で定められることになっております。御承知のとおりでありま
す。これは昭和六十一年までは十三兆円以下ぐらいで推移しておりましたが、昭和六十二年に十六兆円になりました。補正予算で十九兆、二十一兆とふえまして、今公述人に御意見をちょうだいいたしました昭和六十三年度予算では、実に二十八兆円という膨大な額で、これは本予算五十六兆円の二分の一。本予算でさえ新規の国債発行は九兆円に満ちません。借換債を含んでも二十三兆円であります。
 ところが、外国為替特別会計ではそれをはるかに上回る二十八兆円を予定しておりまして、しかもそれを財政法五条で、我が国の歳入であるならば絶対にとってはならない日銀引き受け、つまり、戦争中の軍事費と同じやり方で賄うということになっております。この金が結果的にはドル買いに使われまして、ニューヨーク連銀に預けられ、それによってアメリカの財務証券や最近では国債に運用されるということになっております。これは結局、我が国の政府が日銀引き受けで円を創出いたしまして、それでアメリカの財政赤字が賄われているという格好になります。これは東海銀行、三菱銀行といったところの調査部や、あるいは比較的保守的な経済学者も憂慮しているところでございます。
 まず和田先生に伺いますが、こういう外為特別会計で使われる資金を二十八兆円も出すということは、円の過剰流動性といいますか、これはインフレ要因にもなりますし、現実に土地についてはこの金が流れ込みまして非常な土地騰貴を起こしたと多くの学者が言われております。こういう問題についてもし御意見がございましたら、和田先生、石原先生から一言でも御意見を承りたいと思います。
○和田公述人 正森さんのそういう御指摘につきまして、せんだってNHKテレビの本委員会の中継を私は聞いておりまして、なるほどそういう問題があったのかと、もう少し聞きたかったところでございますけれども、ということで、一つの財政金融面においても盲点といいますか、そういうことでございまして、私も調べて勉強しようと思いながら、ちょっと入学試験に入りましていまだ着手しておりませんので、改めて調べてみたいと思っておるところでございます。
○石原公述人 私はどうもこういうような財政面におきましては素人でございまして、技術屋でございますのでよくわかりません。したがって適切なお答えができかねるので申しわけないと思います。
○正森委員 どうも。


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