国会 公聴会


第131回国会 地方行政委員会,大蔵委員会連合審査会公聴会 第1号 平成06.11.21
第116回国会 税制問題等に関する特別委員会 第14号 平成01.12.06
第112回国会 予算委員会公聴会 第2号 昭和63.02.16
第109回国会 大蔵委員会 第7号 昭和62.08.27
第108回国会 予算委員会公聴会 第1号 昭和63.03.19


第109回国会 大蔵委員会 第7号

昭和62年8月27日(木曜日)
    午前10時開議
出席委員
  委員長 池田 行彦君
   理事 熊川 次男君 理事 笹山 登生君
   理事 中川 昭一君 理事 中村正三郎君
   理事 野口 幸一君 理事 宮地 正介君
   理事 玉置 一弥君
      新井 将敬君    井上 喜一君
      石破  茂君    今枝 敬雄君
      江口 一雄君    遠藤 武彦君
      金子 一義君    小泉純一郎君
      笹川  堯君    杉山 憲夫君
      鳩山由紀夫君    村井  仁君
      村上誠一郎君    山中 貞則君
      上田 卓三君    沢田  広君
      中村 正男君    早川  勝君
      堀  昌雄君    日笠 勝之君
      森田 景一君    矢追 秀彦君
      山田 英介君    安倍 基雄君
      正森 成二君    矢島 恒夫君
 出席政府委員
        大蔵政務次官  中西 啓介君
        大蔵大臣官房審
        議官      尾崎  護君
        大蔵大臣官房審
        議官      瀧島 義光君
 委員外の出席者
        参  考  人
        (東京大学教授)金子  宏君
        参  考  人
        (日本労働組合
        総評議会経済局
        長)      井上 定彦君
        参  考  人
        (東京都地域消
        費者団体連絡会
        代表)     寺田かつ子君
        参  考  人
        (全日本労働総
         同盟政策室長)柿沼 靖紀君
        参  考  人
        (主婦連合会副
        会長)     中村 紀伊君
        参  考  人
        (経済評論家) 井上 隆司君
        参  考  人
        (青山学院大学
        経済学部教授) 原   豊君
        
参  考  人
       
 (税経新人会全
        国協議会理事
        長)      関本 秀治君

        大蔵委員会調査
        室長      矢島錦一郎君
    ―――――――――――――
八月二十六日
 国民本位の税制改革に関する陳情書(東京都大
 田区大森西二の一四の二三大塚謙二)(第五二
 号)
 所得税等の大幅減税に関する陳情書(北海道旭
 川市六条通九の四六旭川市議会内太田俊一)(
 第五三号)
 大型間接税の導入反対、マル優制度の存続に関
 する陳情書外二件(秋田県雄勝郡羽後町西馬音
 内字上川原三〇の一羽後町議会内佐藤富蔵外二
 名)(第五四号)
は本委員会に参考送付された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出
 第四号)
     ――――◇―――――

○関本参考人 税経新人会全国協議会の理事長をしております税理士の関本でございます。現在、当委員会におきまして審議中の所得税法等の一部を改正する法律案についで、意見を申し上げたいと思います。
 まず第一に、今回の所得税法等の一部を改正する法律案は、さきの百八国会におきまして全国民的な反対運動によって廃案に追い込まれました、いわゆる税制の抜本的改革に関する法案の一部を切り離しまして、細切れ的にほぼそのままの形で再提案されているものであるということを指摘しておきたいと思います。これは、去る四月の一斉地方選挙におきまして国民から不信任されたものの一部でありますから、中曽根総理の公約違反、議会制民主主義のルール無視という批判はどうしても免かれないものであろう、このように考えます。
 去る七月三十日の日経等各紙の伝えるところによりますと、当初政府は、前回同様に、新型間接税の導入を含みとした所得減税、法人減税の最終目標を盛り込むことを予定しておられた模様でございます。しかし、売上税の失敗に懲りまして国民の反対を和らげるため、つまり国会対策を最優先するということで、その第一段階である昭和六十二年度の改正だけを分離して法案として提出されたことは広く知られているところでございます。ですから、新型間接税の導入、所得税減税の第二段階、法人減税、これらが来年度以降の改正案として提出されてくることになるであろうということは、ほぼ明らかであると思われるわけであります。
 このような提案の仕方は、納税者国民に本年度以降の将来にわたって行おうとする税制改革の全容を秘匿して、国民を欺くものであるというふうに考えられるものでありますから、政府はすべからく税制改革の全体像を示した上で、十分時間をかけて国民の意見を聞くという民主的な手続をとるべきであると思います。特に、一連の税制改革の第一歩として位置づけられておりました法人税率の四三・三%から四二%への引き下げにつきましては、時限立法の期限切れということでございまして、本年四月一日以降終了する事業年度から既に年間四千五百億円ベースの減税が先行実施されてしまっているという点も、批判されなければならない重要な点であるというふうに考えるわけであります。
 第二に、今回の所得減税が構造的にもその規模においても全く不十分であるということだけではなくて、その実態は表向きの中堅所得階層の負担の軽減という理由とは逆に、最高税率の一〇%の引き下げだとか利子に対する一律二〇%の分離課税の適用などによりまして、大資産家、高額所得者層中心の減税となっている点を指摘しておかなければならないと思います。先日の当委員会でも明らかにされたところでございますけれども、大蔵省のモデル試算とは異なりまして、給与所得者の六三%を占める人々が配偶者特別控除の適用を受けられない。加えて、マル優の廃止によって年収四、五百万円程度の中堅以下の世帯では、逆に二万円近い増税になるわけでございます。このことは、上に厚く下に薄いという今回の改正案の本質の一端を示しているということが言えるわけでございます。これに対して大資産家、高額所得者層は、最高税率の一〇%引き下げと利子に対する一律二〇%の分離課税の採用によりまして、絶対的にも相対的にも大幅な減税を受けられるわけでありまして、不公平はなお一層拡大することになるわけでございます。
 第三に、今回の改正案の最大の争点の一つでありますいわゆるマル優廃止について述べさせていただきたいと思います。
 第一点。利子は資産性所得であるから、マル優を廃止しても公平原則には反しないという意見がございます。しかし、我が国の貯蓄性向の高さというものは、既にたびたび指摘されておりますように、あるいは先ほど中村参考人から御指摘がございましたように、我が国の社会保障制度の貧弱さに対するいわば国民の自衛手段としての性格を持つものでございます。したがいまして、それは一種の社会保障制度的な側面を持っているということは否定できないわけでございます。ですから、やるならばまず利子配当の源泉選択分離課税だとかあるいは有価証券の譲渡益の非課税、土地等の譲渡に対する軽課措置、あるいは課税の繰り延べ等担税力の高い特例の廃止を行うべきであります。
 例えば、具体的に申し上げますと、松下幸之助さんは、松下電器産業の配当だけで昭和六十二年分で六億八千万円強の所得がございます。これは総合課税をされておりません。三五%の分離課税で、わずか二億四千万円の源泉税がかけられるだけであります。本来ならば総合で七〇%の課税、四億八千万円の負担をすべきものでございます。これがこのような軽課で済んでいるというのが実情でございます。
 第二番目としまして、改正案は一律一五%の分離課税という比例税率をとっていますので、高額所得者も低所得者層も一律の課税を受けるということになります。これは、担税力の高い人ほど高率の負担をすべきであるという憲法の応能負担の原則に反するものであります。
 三番。一律一五%の強制分離課税は、本来所得税を負担する義務のない人、こういう人々に対しても新たに負担を強制するものであります。この源泉税は、先ほどもお話がございましたが、確定申告によって取り戻すことができないということでございます。
 四番。源泉徴収によって受け取り段階で天引きされてしまいますために、これは納税者にとっては利率の引き下げということと同様の効果が生じまして、事実上間接税と同様の効果が出てくるわけであります。このことは、税痛を失わせ、ひいては税の使われ方、つまり政治に対する関心を薄れさせていくという、民主政治のあり方に逆行する税制である、こういうふうに言わざるを得ないと思います。
 五番としまして、マル優廃止、一律一五%の分離課税の最大の不公平は、大部分の勤労者にはゼロから一五%への無限大の増税、逆に既に分離課税を利用している大資産家にとっては三五%から地方税を含めて二〇%へと、一五%もの大幅減税をもたらすという点でございます。これは恐らく、今回の税制改革の中の超目玉商品であろうと考えられます。この不公平の拡大が必ずしも国民に広く知られていないということは、大きな問題であろうと思うわけであります。
 六番。マル優の不正利用が大資産家の税負担を相対的に軽減しているから、廃止によってかえって公平が確保されるという説明がされております。これは全く逆立ちした議論であると思います。マル優の不正利用は、現行制度で十分防止できるはずであります。本人確認の強化が図られまして、ようやく軌道に乗りつつあるところでありますけれども、その実績の推移も見ないまま次の制度へ移行するということについては大きな疑問がございます。現行の非課税貯蓄申告書、同限度変更申告書、同異動申告書、利子等の支払調書等が法定されておりまして、それが税務署に提出されておりますので、名寄せによりまして総合課税は十分できるという仕組みになっているわけでございます。所得税額が公示されるような高額の所得者というものは極めて少数でございますから、これらの人々や家族名義の預金を名寄せすることによって、総合課税は行おうとすれば十分できるということでございまして、要は国税庁当局がそれをやろうとする意思があったかなかったかという問題に尽きると思います。
 第四に、課税最低限について意見を述べさせていただきたいと思います。
 今回の改正案では、課税最低限の引き上げについては、配偶者特別控除の創設以外は全く触れられておりません。これは今回の所得減税の最大の欠陥でございます。課税最低限は、現行法では夫婦子二人の標準世帯でわずか百三十二万円、配偶者特別控除を加えでも百四十八万五千円にすぎません。現在、生活保護法による生活扶助基準は、大都市でまいりますと二百三十万円を超えております。生活扶助基準が、憲法二十五条の健康で文化的な最低限度の生活を保障しているというわけではございませんけれども、それよりもさらに低いこの課税最低願は明らかに憲法の保障する生存権を侵害するものである、このように言わなければなりません。したがって、所得減税は、何よりもまず課税最低限の大幅引き上げによるべきである、このように考えるわけであります。この点に関しましては、一昨年のレーガンの税制改革をもっと見習うべきであると思います。
 最後に、以上申し上げましたように、どの点を見ましても、今回の税制改革が新たな不公平の拡大であり、税制や財政の所得再分配機能という基本原則の否定につながりかねないような重大問題を含んでいるものでございます。戦後培われました財政民主主義を根底から覆す危険性をはらんでいるということが言いたいわけでございます。したがって、これは減税額をどの程度上乗せするかというような量の問題で解決される問題ではない、まさに質の問題であるというふうに考えられますので、どうしても譲れないものを含んでいる、このように申し上げまして、私の陳述を終わらしていただきたいと思います。ありがとうございました。(拍手)

○池田委員長 ありがとうございました。
 以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――



○池田委員長 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。沢田広君。
○沢田委員 参考人の皆さんには、公私にわたり大変御多用の中、我々のためにおいでをいただきまして、心から厚くお礼を申し上げます。限られた時間でありますが、ここで皆さんにそれぞれ述べていただきます事項は、我々がそれを参考として今後またその審議に生かしていきたい、こういうふうに委員長も恐らく思っていることであろうと思いますので、意を強くしてひとつその所信を述べていただきたいと思います。
 最初に、それぞれおっしゃっておられることが別々でありますが、主な事項から御趣旨をまた述べていただきたいと思います。
 今度の税制改革の中で一番最初お伺いしたいことは、減税と、それからこの法律は来年度施行になっておるわけです。今お述べになられた場合は、それぞれ一緒の次元でお述べになられました。一兆五千億であれ一兆三千億であれ、減税は減税として独立して六十二年度施行である。また、あとのいろいろな増税の部分は六十三年度施行であります。もちろん御承知でお述べになったと思いますが、やはりこういうところへ来て一緒に一つの法律になって述べると言われますと、相関関係で述べざるを得ないと思うのでありますが、本来私たちは別個に取り扱うべきものであって、ことしの減税はことしの減税である、また来年のそれを補う、もし増税は増税である、こういうふうに理解をして論議すべきであると思っているわけであります。一緒にまないたの上にのせられてしまいますと、あしたの料理もきょうの料理も一緒に議論せざるを得なくなるという嫌いはあると思いますが、その点ひとつ中村さん、井上さん、原さん、みんな全部聞きますと時間が限られてきちゃいますから、とりあえず御三人の方からその点はいかがにお考えになっておられるか、お伺いをいたしたいと思います。
○中村参考人 減税が先行して、そしてマル優などの問題は来年になっても、四年の定期預金とか
貸付信託とかそういうものがありますから、それは違うのだということはよく存じております。しかし、根本的には、マル優廃止が入ってしまうということは、ことしはことし、来年は来年とおっしゃいますけれども、将来的に見ればそれはもう、一つの税制の中でそれが入ってしまうということについては私どもは同じ。
 そして、ことしは株だとか土地だとかのいろいろな自然増収があって、お金はあるんだというふうにもあちこちで聞かされておりますけれども、そういうものがどれぐらいあって、そしてそういうものはどういうふうに今度の減税に使われるのか、そしてまた、そのほかに大企業、法人税の問題とかいろいろ言われておりますところでどれぐらい増税ができるのか、そういうことがもっと国民の前に明らかにされないで、そしてマル優がここで入ってしまうということは、今ではない、来年の一月なのか四月なのか、いろいろ出ておりますけれども、だとしても、それは決まってしまえば、いずれ少し先に延びるというだけでやらされてしまうということで、ですから、我々は、絶対ここで入れてしまうことだけはやめてほしいということを申し上げているわけでございます。
○井上(隆)参考人 今、先生から御質問がありましたことは私も承知しておりまして、減税先行してその分の財源というのはずっと先送りということのようでございます。
 私、ここへ来て強く個人的に痛感するわけですが、そういうことになりますと、いわゆる予定どおりに税収が上がってくればいいわけですが、上がってこない場合というのも考えられなくはないわけですね。そういうことで、今回の税制改革、いわゆるマル優廃止で、減税、それを補うということでございますが、どう考えても今回の税制改革の根本にあるものは、将来の大型間接税の布石にあるんではないか、私はそういうことを強く痛感しているわけでございます。ですから、以上申したとおり、今度の税制改革は、やはり大型間接税の導入の何かスタートというか、そういうことを強く感じているわけです。
○原参考人 お答えいたします。
 確かに、今年度施行のものと来年度のがございます。私の申した中では、地方税などは来年度のことになってまいりますので、同列に談義するわけにいかないことは確かでございます。ただ、割合法律ができますと落ちつきますので、やはり平年度とした場合の効果などは一応考えて話を進めているつもりでおります。
 所得税についてはそういうことでございますが、やはり早く国会審議が進みますと、それだけ、今年度施行だけ早くなりますから、そういう点で、この際減税先行というような形になりましても、それなりに喜ばしいことではないかと私は考えている。実は、それ以前は減税と財源がセットになりまして、同額でやらなければいかぬとなりますと非常に硬直的になってしまうわけです。それが今回の議論では、最初から減税先行やむなしというような形で進みましたし、これは政府の意向だったかと存じますが、かなり弾力的になりました。
 ですから、私は二つに分けまして、一つは緊急の手直しならば時限立法でもいいし、とりあえず戻し減税も構わないのじゃないかと申しましたのは、ことしは財源の余裕がありますから、そういうところは手当てして、実は私は国際関係を非常に重要視しておりまして、対外的にも、とりあえずこのことをやったらということで、外に対する政策をアピールするという意味もあるのじゃなかろうかということを考えておりますので、そういう意味も込めまして、税制のそういう経済政策効果を含めて、減税先行ということも意味あることじゃなかろうか、このように考えておりますし、政党的発想から抜けたことも結構じゃないかと考えております。
○沢田委員 また順次お伺いしますが、井上先生、あと中村先生もそうですが、土地税制についてはやはり改革を行うべきであるという御説も述べられました。
 今のこの高騰していく土地の状況の中で、土地税制に対してどういう形で抑制の効果を上げていくか、あるいは今までの土地優遇税制を取りやめる、あるいは買いかえの年度を引き上げる、あるいはまた譲渡所得に対する税制の強化を図る、さらにあるいは特別に開発行為の規制を強化する、それぞれいろいろな方法があると思うのでありますが、中村先生なり井上先生、あるいは原先生はどうお考えになっておられるか。ちょっとで結構ですが、全部言われるとそれだけで時間がなくなっちゃいますから、例えばこんなところにというようなことでもしお考えがあれば述べていただきたい。
 それから、特に私たちは、これは資産税である、相続の場合を特に申し上げますと不労所得である、こういう意見もございます。しかし、ささやかな親の代からつないだものが、土地が高いために固定資産税も上がり、あるいは売らなければ相続税も納められないということは極めてつらいことではないか、こう宮澤大蔵大臣にも今言っているわけであります。この点に対して、土地の抑制、あるいは固定資産税は地方税でありますが、これをどう据え置いて庶民のはね返りを防いでいくか、土地税制はこういう点に気を使ったらどうかということで、思いついておられることがあれば、二、三について項目を挙げて、こういう点考えたらどうだということを教えていただければ、これは今の最大の問題ですから、我々はこういうところとこういうところにひとつ注意してほしいということで御指摘をいただければ幸いです。それぞれ四人の方にお願いいたします。
○中村参考人 お答えいたします。
 私どもの要望は、先ほども申し上げましたように、固定資産税、都市計画税が来年の一月一日に評価がえが行われます。これが非常に大きくなるであろうということです。で、根本的な土地対策というのは、これは専門家の先生方が十分手を打っていただく。しかし、早急に手を打っていただくとしても、まず我々に振りかかってくるのは来年の一月一日の固定資産税の評価がえでございます。ですから、それはぜひ凍結してほしい。そして基本的な手を早急に打って、今の恐ろしいような土地の高騰に何とか手を打ってほしい。
 相続税についても、同じようなことを考えております。私ども、これは専門的にはよく説明できませんけれども、我々が生きていく上で住んでいる土地とか家屋にかかる固定資産税と、いわゆる商売で使っている、そして売り買いしてそれがまた収益として回っていく非生存的財産というのでしょうか、そういうものとは考え方を変えてほしい。今のような本当に恐ろしいような土地の狂乱物価の場合には、そういうことを考えて何か手を打ってほしい。そうでないと、我々は、親の今住んでいる家に本当に住めなくなるということを普通の庶民感覚で恐れているわけでございます。
○井上(隆)参考人 御承知のように、土地の価格も一般の商品と同じく需要と供給のバランスで決まるわけですね。これは経済学の原則でございます。
 それで、なぜ土地の値段がこのように高騰するかといいますと、大都市もしくはその周辺では御承知のように、土地のいわゆる売り手、供給が不足しているのに一番の地価高騰の原因があることは、だれしも認めるところでございます。したがって、土地の価格を抑えるためには供給を促進する、これが一番の決め手になることは明らかでございます。そのためにはやはり土地の保有税を改定する。
 二百平米ぐらいのごくささやかな土地に住まわれている方、これは固定資産税等は従来どおり、先ほどの中村参考人が述べたように据え置くかなどして、それを超える場合は固定資産税の重課税を行う。だれしも税金を重く課税されるということは嫌うわけでございますが、先ほどお話ししましたように、現在世界経済から見た場合、内需拡大の目玉としてはどうしても住宅建設の促進をしなければいけない。いわゆる天下国家の危急時でございますから、その点は我慢して課税にたえて
いただく。たえられない場合は、当たり前のことですがその宅地を放出せざるを得ません。
 それでその放出をする場合、今みたいな、昭和四十四年以来いわゆる土地の重課税制度というか、そういうようなことできていますと、借金してまで固定資産税を払って、なかなか売りには出しにくいわけでございます。そこで、一般的に長期保有の土地についてはむしろ増税路線から減税路線に変えて、極論を申せば、大都市周辺のいわゆる宅地に類似する農地等は五年間ぐらいの時限立法で、売却した場合所得税、住民税ゼロとかそのような英断を持って税制改革を行っていただければ、非常に土地の供給促進になるのではないかと思います。
 今国家の財政が非常に不足しているので、減税、税金ゼロなんということは不見識に聞こえるようでございますが、ちょうど昭和五十年当時、あの当時は割と土地税制が緩和されておりました。その当時、深川の木場にいらっしゃった長谷川万治さんという方が、木場の移転に伴って東京都に土地を大量に売ったわけでございます。しかし、その当時のマスコミ等は、非常な高額所得が発生したにもかかわらず譲渡所得税が安いということで、それは不公平だということを盛んに報道したわけでございます。
 したがって、私の記憶では、昭和五十年、五十一年、長谷川万治氏がその当時の高額所得者の第一位を占めたわけでございますが、三年後に亡くなったときには、余り所得税とか住民税を支払っていなかったため今度は相続税の支払いの日本一になった。そういういきさつが私の脳裏にございますので、どうか今お話ししたようなことでおやりいただければ、内需拡大にはなり、結果的には国の財政収入の拡大、それと国際的に貿易摩擦解消になるということで、私はそのことについて非常に確信を持って今お話しさせていただいたわけでございます。
○原参考人 お答えいたします。
 土地税制につきましては、今までの参考人がお述べになったような、事業用資産と住居を分けるとか、さまざまなことがございますので、積極的にやっていただきたい。同感でございます。
 しかし私は、税制だけでは無理だと考えております。土地問題、特に地価問題は東京問題、都市問題ですから、したがってこれは何とかしなければならない。一つはやはり規制緩和だと思います。土地の供給を増大するにつきましても、やはり規制を緩和しなければいけない。ただ、規制を緩和するということは自由にほっておけばいいということではないので、ほっておけばまた地価が高騰することもありますから、その辺のチェックは必要である。したがって、その場合の土地の供を増大させるためには、税制によってやっても限界がございますから、これは新しい土地をつくらなければ仕方がないと思いますので、例えばウオーターフロントをつくるにいたしましても、結局は交通機関をどうするかの問題になってくる。都心から一キロで一平米で三千万円ですか、これではとても無理ですから、そういう場合には自由にしては無理ですので、やはり公共の土地の収用制度というものを積極的に利用していくことが必要でございましょう。そしてそのもとで新しい土地を、そうした交通機関プラスの土地でございますが、そうした利用できる土地をつくり上げていく、こういう形が必要ではなかろうかと考えております。
○関本参考人 簡単にお答えしたいと思います。
 私も基本的には、土地政策というのは税制に求めようと思っても、これは非常に困難である。というのは、過去の土地税制は失敗の連続であったと考えます。したがって、総合的な土地政策というものが確立されない限り、土地問題は解決しないというのが基本的な見解でございます。
 それから第二に、それでも税制上どのような措置をとるべきかということでありますけれども、大法人の投機的な土地取得、土地売買についてはいわば禁止的な重課をすべきではないか、このように考えます。
 それから、固定資産税につきましては、これはいわゆる庶民の生存権的な財産権と、それから資本的財産権あるいは投機的財産権、こういうものは峻別しまして、生存的財産権はいわば基本的人権の一部として保護する立場での立法が必要であろう、このように考えます。
 それから、土地問題の基本はやはり住宅問題であろうと思いますので、これは大量の良質な公営住宅の供給というようなことで、これは内需拡大にもつながりますので、そういう政策によってこの住宅問題、土地問題の解決を図る方向が大事であろう、このように考えるわけであります。
 以上、簡単にお答えいたします。

○沢田委員 では、マル優の方に入りますが、マル優で特例があることが、かえってそこにまた特殊な現象を起こして不正預金者が出てくるのではないか。公的書類を提示すると法律にはなっております。でありますが、そういう点に配慮しなければならないかどうか。六十五歳以上の者とか、あるいは身体障害者の手帳を持っているとか、あるいは介護を要する者だとか、二十何項目にわたりまして特例があるわけでありますが、そういう特例を残すことは、また違った意味の矛盾をつくりますよという一つの意見もあります。そうではなくて、この特例は六十五歳でなくて、定年は六十歳だから、六十歳からにもっと引き下げてやるべきである、あるいはもっと弱者というものもいるわけだから、その範囲は、例えば全体的に直せれば別として、今のままでもし直すと仮定した場合にはさらに拡大をすべきである、こういう両論があるわけであります。
 もちろん、我々の言うとおりに、これが一応取りやめになって廃案になってもらえれば最高の理想なんでありますが、それを求めて我々は努力しますが、一歩違った立場になった場合にどちらを選択されることが望ましいのか、その点、大変恐縮ですが、中村さん、井上さん、原さん、ひとつお願いをいたしたいと思います。
○中村参考人 お答えいたします。
 大変難しい質問で、私はもう絶対やるべきでないという議論しか仲間としておりませんので、では条件闘争はどこでするかということは仲間と相談しないと、ちょっとここでは答えられませんので……。
○井上(隆)参考人 今回マル優について、一定のお年寄り等については特例を残すということでございますが、私が長年税理士等をやった実務経験から言わしていただきますと、やはり不正利用、借名行為等で従来と何か余り変わらないというか、そういう気がしてならないわけです。
 今回のマル優問題については、特に金融機関が従来から税務当局の税務調査を受けたり、その結果マル優の不正が発見されて源泉所得税を負担させられてしまった、そういうようなことで、マル優があるからそういうことが起こるということで非常におっくうがっていたという面がありまして、そういうことがあって、途中で金融機関等はマル優廃止に賛成みたいなニュアンスに変わっていったわけでございます。
 ところが、よく考えてみますと、いわゆる一部の特例マル優が残るわけで、その面では税務当局の税務調査というのは従来どおり行われると思うわけで、また行わないと、先ほどお話ししたように、お孫さんがおじいちゃんの名前を借りていわゆる不正マル優をするというか、そういうことも十分考えられますので、一番理想的なのは、全部総合課税に移行して源泉還付制度、そういうものに切りかえた方がよろしいと思います。ここで一時マル優を廃止して、小手先だけのことではなく、先ほども承りましたようにマル優を廃止しても、非常に長い期間かからないと税収効果が出てこないというか、そういう面もあるのでしたら、ここでマル優廃止だけを取り上げないで、将来の抜本的な改正に備えて、そのときに全体的な議論をなさった方がよろしいのではないか、そういうことを強く感じる次第でございます。
○原参考人 簡単にお答えいたします。
 私は、原則課税にしろという立場に立っており
ます。原則課税にした上で、やはり急速に制度が変わるのは好ましくありませんから、しかもまだ高齢者に対する福祉政策というのが充実しておりませんので、その経過措置として少額利子の税額還付制というのをとったらどうか。例えば、年末調整で六百万円以下の預金に対しては税額還付をするという、そのくらいの手続は、これから高年齢者もいろいろ仕事をやらなければいけないので煩瑣だと言っておれないし、かえって徴税コストで考えますとよろしいんじゃないかと私は考えております。
 以上であります。
○沢田委員 ありがとうございました。
 今度、いわゆるお医者さんの控除額が十万円に引き上げられますが、十万円以上でなければ減税になりませんから、今まで五万円以上であったものが今度十万円に引き上げられますと余計に領収証の請求が多くなる、こういう見方が一つ。それから、十万円になったのではとても及びがつかないから、あきらめちゃおうという人がふえる、それからまた税務署の方では、今まででも請求者が物すごく多い、だからそろそろやめさせたいという気持ちもあって、十万円に上げたのではないのかという推測もある。あるいはまたお医者さんの方からも、年じゅう領収証を請求されたんではかなわないから、少し高くすればあきらめてくれるから少なくなるので助かる、こういういろいろな見方があるのであります。
 この点については、これも御相談いただかなければお答えできないかどうかわかりませんが、主婦の立場で中村さんの素朴な感覚として、十万円に引き上げたということについてはプラスなのかマイナスなのか。こんなのは本当はかからないはずなんですよ。完全医療であれば、これはかかるのが不思議なんです。お産や何かは医療保険に当たっておりませんから別ですが、常識的にはないのが当たり前なのに、これが出てくるということなんであります。これは女性の立場も含めて中村さんから、感じでいいですから、ひとつお述べいただきたいと思います。
○中村参考人 いろいろ御配慮いただき恐れ入ります。
 健康保険が本人一割、家族三割ということで取られるようになっております。そしてまた働き盛りの医療費、歯医者さんが非常に高いという問題もございます。ですから、医療費の控除というのはだんだん知られてまいりまして、みんな領収証をもらって何とかやりたいと思っております。しかし、それは長期入院をするとかということになればでございますけれども、なかなか十万円までいくというのは、大病でもしないとならない。
 私は、五万円というのは、五万円の領収証を持っていけばそれを控除してもらえるのかと思ったら、五万円まではただで、その上に乗った分だけしか控除してもらえない。そうすると、これを十万円にするということは、普通の家庭ではなかなかそれだけの控除額をためるというのは難しいんじゃないかと思います。そういう意味では、十万円にするということは、普通の家庭にとっては非常に厳しい措置だ、お医者さんの方は面倒くさいかもしれないけれども、この部分についてはぜひカットしていただきたいと私は思います。
○沢田委員 念のためですが、これは昭和六十年度の国税庁の調査結果ですが、医療費控除の人員は百八万人いて、金額は千七百七十二億減税になっていたわけですね。恐らくこれが三分の一ぐらいに減ってしまうのではないかと、今私たちは推定しているわけです。そういう意味においては今の御意見で、ほかの先生方にもお聞きすればいいのでしょうが、大体同じではないかと思いますので、省略させていただきます。
 なお、もう一つは専業の妻の控除十六万五千円なんですが、これは二乗二分の一とか、いろいろな意見がありますが、特に有閑なんという御意見もなくはありませんでした。言葉の表現が適切であるかどうかわかりませんが、そういう御意見もありました。専業の奥さんには十六万五千円あって、共稼ぎの人にはないというのは少し寂し過ぎるというか不公平じゃないか、こういう意見もあります。もう一つは、みなし法人における控除が事業所得の八割までいいという形になる。これと比較した場合に、若干バランスに問題があるのではないかという気がいたします。
 では、これは大変恐縮でありますが四人の方から、専業主婦の関係と共稼ぎについて、八百万円という所得制限はされておりますから、その限度は同じに見ていく必要性があると思いますが、御意見があったらお聞かせいただきたいと思います。
    〔委員長退席、笹山委員長代理着席〕
○中村参考人 先ほどの事業者の妻の問題もございますから、専業主婦控除があってもよろしいとは思います。しかし、私どもは国連婦人の十年で、全国組織の五十一団体が一緒に行動しておりまして、これは早くから、もし専業主婦の家事労働を評価したものであるならば、働く女性も家事労働をしているのだから同じように公平に評価してほしい、そういう意味では同様の考慮をしてほしいという要望を早くから出しております。全国組織の五十一団体でいたしておりますので、そういう意味で、どういう形にするかというのは組織の中でいろいろ議論をしておりますけれども、なかなか五十一団体で統一した見解というところまではまだいっておりませんけれども、やはりこれは公平にしていただきたい、女性の中で分断されるようなことのないようにお考えいただきたいということでございます。
○井上(隆)参考人 大体今の中村参考人と同意見でございますが、私はこの点研究不足というか、そういうことがございますが、専業主婦の特別控除が認められるというか、こういうことになりますと、逆に現在専業の夫というのもいるわけで、またその控除の問題が出てきて、何かいろいろごちゃごちゃしてくるのではないか、そういう感じがしないでもございません。
○原参考人 この金額の多寡は別といたしまして、やはり日本の今までの歴史的経過なり日本の家庭生活の実態を見る以上は、私は専業主婦控除はあっていいのだ。先ほど中村参考人のお話ですと、女性はすべて同一に考えてということでございますけれども、外で働く人はそれだけの時間を外で使って所得を得ているわけであって、その間夫婦が協力して家庭を――今、私の教え子の男性などは、家へ帰って、奥さんが勤めている間は自分で食事をつくったり洗濯をしておりますので、帰って女性がいつも家事をするとは限らないわけですから、細かく言いますと切りがないわけでございますので、そういう点は私は古い男でございますから、日本の公序良俗から申しましてそれはあっていいのじゃないか。
 ただ、八百万円という上限はございますから、したがって、うんと高所得層の奥さんにこれを充当するわけじゃございませんから。でも、もしできますならばもう少し金額を多くしていただいた方が、家にじっとして子供の世話をしている女性にとりましては、自分の価値を金額で評価されるのはどうかと思いますけれども、より望ましいのじゃなかろうか、このように考えております。
 以上であります。
○関本参考人 まず、専業主婦控除、いわゆる配偶者特別控除の問題でございますけれども、これは非常にややこしいといいますか、こそくな手段ではないかというふうに考えます。というのは、これは給与収入で申し上げますと、五十七万円から徐々に減ってまいりまして九十万でゼロになる、こういうようなことになってしまいますので。それからもう一つ、実務上は、妻がこれを受けるとしますと、夫の年末調整時までには妻の年収が確定しないと、年末調整の再調整というようなことをしなくちゃならないということで、実務上一体どう扱うのだろうか、私ども非常に頭を悩ませているところでございます。これもこういうような形ではなくて、課税最低限の大幅引き上げというようなことで当然その中に吸収されるべきものではないか、このように考えるわけであります。
 それから、これとの関係で、みなし法人の事業主報酬とのバランスはどうか、こういうお話がございましたけれども、これは私は多少次元の違う問題ではないかというように考えております。我が国の所得税法は、原則として同居の親族から受ける対価はすべて必要経費には算入しないという原則がございます。その例外が事業専従者控除と青色専従者給与の制度でございまして、これは欧米の原則として自家労賃を完全に認めるという制度と比べたら大変なおくれでございます。この辺のおくれを克服して自家労賃を完全に認めるという制度になりますと、こういう問題はほとんど起きてこないのではないか、このように考えますので、この点についてはそのような対処をお願いできればありがたい、こういうふうに考えます。

○沢田委員 原先生にお願いしますが、給与所得控除についてお伺いします。給与所得控除というものが、今度年金関係等は八十万、四十万に一応変わりました。この給与所得控除が、クロヨンなりトーゴーサンなりの意見の場合に出てくる一つの大きな問題で、実額控除制度が導入されたわけであります。そのかわり、通勤費とか移転をした場合の輸送費とかいうふうに極めて限定された実額控除で、言うならば実効のない制度と言ってもいいと思うのであります。この給与所得控除というものを先生はどう解釈されておられるか、お伺いをいたしたいと思います。
○原参考人 税制におきます控除のあり方というものは、本来非常に臨時的なものであるべきものであって、税制の根本からいえばおかしいと私は常々考えております。やはり所得において原則を立ててそれによって徴税をしていく、こういうことは所得税の筋でございまして、そこにいろいろ控除を含めますと、これはやはり不公正の源泉になってくる。ある点で控除を入れる、控除を入れないという差が出てまいりますし、そういう点ではいかなる理由があれ、この控除というものはなるべく少なくすべきである、こういうふうに考えております。
 ですから、給与所得控除を従来からやってきておりますけれども、これも一つの便法でございまして、やはりすっきりしない。しかも、その金額の限度におきましてもしっかりした計算もできませんし、また基準もいささか恣意的に決められることが多いということになってまいりましょう。そういう点で、私は、この辺のところでどれだけのものが果たして妥当であるかということ以前の問題として、やはり控除はなるべく少なくしてもう少し税制をすっきりしたものにすべきだ、根本的にこういうふうに考えております。
 今度の場合にありますけれども、やはり経過措置としてはそういう、抜本的と申しましてもすぐにやっていくことは無理でございますから、いろいろの控除、例えば年金、高齢者年金も出ておりますけれども、そういうものはやはりある程度は存続せしめながら、さっき申しましたような例えば生活の充実との見合いを考えながら、徐々にこういうものを減らしていくのが筋であろう、こういうことになりますので、通勤費を入れるとか入れないとか、あるいは今度申告制を入れたとか入れないとか申しましても、いささか小手先の感がしております。
 以上であります。
○沢田委員 手先のような形だということは、意味がないという意味なんでしょうか。それとも、そんなことはむだだという意味でしょうか。
○原参考人 いやいや、そういうことじゃございません。私が申しましたように、経過措置という意味で認め得るなということでございます。一緒になくしてしまって何が出るかというと、何も出てきませんですからね。そういう意味で考えております。ですから、ない方がいいというのでは決してなくて、それだけの意味があるけれども、なくす方向に持っていくべきだ、そういうことでございます。
 やるとすれば、クロヨンが一番問題になるところでございますから、そうした水平的公平の観点からすれば、同一所得に対しては徴税の方法なんか変えるのはおかしゅうございますから、事業者であれ勤労者であれ同一の徴税方法で取る、そういうのが筋でございましょう。さっきのみなし法人のことも、そういうことから出ることじゃないかと私は考えております。
○沢田委員 これはシャウプ勧告以来から若干の修正はされてきておりますが、給与所得控除というのは、今でも大体百六十五万で四割とか、あるいは三百三十万で三割とか、あるいは六百万で二割とか、一千万で幾らとか、なぜ所得が高くなると下がるのかなという気が私たちはしているわけです。しかし、その当時の解釈は、個人の稼働力の消耗に対する対価である、余暇の犠牲に対する対価である、勤務に伴う概算的な投資経費である、把握率の違いである、それから要すれば体の減価償却である、こういうことが給与所得控除がつくられたときの原因で、今政府が言っている、実額的に、通勤費であるとかあるいは移転のときの移転費であるという限定されたものとは極めて質的に違った解釈をしていると思うのです。その点我々は、若干それは小さく解釈している。訴訟もたくさんありましたし、いろいろ判決も出ておりまして、先生方の服装なり本なりそういうものはどうなんだ、研修費という言葉が入っていますが、これもどこまでかということは極めて微妙だと思うのです。
 それで、今度は経済の方の評論家でいらっしゃいます井上先生の方から、こういうものについて、給与所得控除について、クロヨンという見方もある、今言った本当にシャウプ勧告のときのいわゆる労働の対価、簡単に一言で言えばそういうもので控除すべきだという解釈もある、その点はいかがお考えになっておられますか。
○井上(隆)参考人 今度のサラリーマンの実額控除というのは、実際問題、私は推測するのですが、導入されても申告をなさるという方はごく少ないと思うのです。しかし、ローマは一日にして成らずという例えもございますように、今度の新制度というのはそれなりの意義があって、それから以後年代とともにいろいろ改定していけばいいものができるというか、何かそういう感じもしないではないわけです。ただ、我が国の場合欧米と違って、研修費とか、先ほど出た移転費ですか、それとか通勤費等はみんな企業から現物で支給されるわけですね。されないのは組合費ぐらいなものでございます。ですから、ちょっと先ほどお話ししたように、余り実効のないものではあるけれども、それを第一歩としてとらえていけば、それなりの効果はあると思うわけです。
 ただ、私が思うには、この給与所得控除、いわゆるサラリーマンの必要経費でどの点までとらえるかというのは、実際問題、シャウプ勧告以来いろいろ非常に議論の分かれたところだと思いますが、収入の多寡にもよりますが、平均して収入の三割ぐらいは認められる。だけれども、実際よほどのことがない限り、厳密に考えた場合、例えば一般の事業所得者との兼ね合いから見た場合、三割いくというのは余りないような気が、実務的に今まで私がやってきた感じではするわけでございます。何かちょっと理論があっちこっち飛んだようなあれでございますが、私なりに何かそんなような感想を持っているわけでございます。
○沢田委員 では、続いてで恐縮ですが、今度の税法の改正で加算税の引き上げが、いわゆる過少申告は今度は三〇%から三五%、無申告は三五%から四〇%、それぞれ重加算税体制というものがさらに強化をされたわけであります。これはうっかり見逃すところなんですが、なぜ今度の改正からいわゆる過少申告と無申告について高くしたのか。これは政府の方に聞かなければわからないことなんではありますけれども、皆さんから見て、いわゆる徴税大国ではありませんが、苛斂誅求のそしりを受けるようなことになるのではないかという危惧を持つものの一人です。そういう意味において、これは税制をやっておられる、実際に当たっておられまする井上先生、それから原先生、関本先生から、それぞれ一言ずつお聞かせをいただきたいと思います。
○井上(隆)参考人 今御質問の加算税の税率アップとか、先般行われたいわゆる税金の時効の問題、それとか処罰の問題、ここ五年ぐらいの間にいろいろ税の申告漏れ等については、いわゆる罰則規定等が強化されているというのも事実でございます。それについては、当局の今までの税務調査、そういうことの感触から、罰を厳しくすれば税の逋脱等が減るのではないかということで行われているのではないかと思うわけです。しかし、私が思うのは、実際税を少なく申告しようとか脱税をするとかそういう意図がなくて、ただ単に税法を知らなかったために過少申告してしまったとか、そういう方もいっぱいいるわけでございますね。
 それで、先般東京国税局で問題になりました、いわゆるリースマンションの脱税問題というのが新聞紙上で大きく報道されたわけでございます。御承知のようにマンションを買いますと、従来の商慣習で契約書上土地と建物は一括して表示されている。しかし、それを実際賃貸した場合、減価償却する場合、建物の部分しかできないわけで、それをすくい出す方法というのは専門家の間でも、どういうような方法で建物部分を引き出すかということがなかなか難しい状態なわけだったわけです。したがって、この前当局から摘発された中には、税理士さんもいらっしゃると新聞紙上にも発表になっておりましたね。そのように、税制が複雑なために何かよくわからないで税金を適脱してしまう、そういう方には、税法がそうだからということでびしびし課税されたのではいろいろ摩擦も起こりますので、その点、十分に御配慮をいただきたいと思うのですね。
 この前のマンションの件については、基準になるものが余りないので、御承知のように住宅取得特別控除を適用する場合、あれはローンの家屋部分しか適用にならないわけでございますね。しかし、では実際家屋部分をどのように拾い出すかということで、あれは措置令でもって四階建て以上のマンションの場合は七〇%と決まっているわけですね。したがって、一般の納税者は、その七〇%を頼りにすくい出して減価償却したらそれが結局水増したということで、何か新聞紙上に載っていたわけでございますね。
 ですから、いろいろな罰則等も強化されるのもいいわけですが、そのように、一般納税者としてはどのように計算したらいいかわからない、そういう問題等の場合は、もしそれが実際と違っていた場合、税法にそのような罰則規定とかいわゆる加算税の規定があるからというのでそれをずばずば適用しないで、恩情を持った税務行政というものを今後ともおやりいただきたいとは思います。
○原参考人 お答えいたします。
 もともと、こういうものが新たに改正されて強化されたというのは、そのような不届き者がたくさん出たからでございましょうし、また、金額が非常に多うございまして、御承知のように土地を初めとして土地転がしでうんと利益を得たのに申告しないとか、あるいはこういう形で脱税をするのを、先ほどもいろいろお話が出ましたように、コーチするような職業が出たりするような現実に対応したものだと思いますけれども、こういう罰則を強化することによって罪を犯すのを防ぐというやり方は、本末転倒な面が多分にあるわけでございまして、死刑などをどんどんやった方が悪いことをするのが少なくなるから厳しくやっちゃえということと同じであって、もともと納税意識を高めて、そして積極的に納税するような雰囲気をつくっていくのが筋でございましょう。そういうことを抜きにして、いきなりこわもてにお上からこういうことをやるとけしからぬぞという形でやるというのはどうも好ましくないし、今も先生がおっしゃったようにそういう危惧を持ちますし、その姿勢が問題だと私は思います。ですから、国税庁あたりは、クロヨンのこともありますから、そのことよりも税を公平に徴収するような努力をやりまして、ごまかして得をするようなことをなくすことが先決問題だと考えております。
 以上であります。
○関本参考人 加算税の一律五%の引き上げということでございますけれども、これには私も反対でございます。特に今回の改正は、専ら制裁措置の強化によって徴税の確保を図ろうという姿勢が非常に露骨にあらわれているように思いますので、本来税務行政に対する信頼あるいは納税道義の高揚というのはそういう形で行われるのではなくて、まず公平な税制の確立、それから適正な税務行政、これによって初めて納税者の信頼が得られるわけでありまして、決して制裁措置を強化すれば脱税がなくなるという簡単なものではないと考えております。
○沢田委員 時間が長くなりましたからあと二つぐらいで終わりますが、マル優をもし例えば政府の言うようにやったら預金は減るであろうか、現状にとどまるであろうか、逆に安心してふえるであろうか。郵便も都市銀行も国債もありますが、その点の見解はどうなんでしょうかということをお聞きかせいただきたい。
 それと同時に、今度は傷害保険料、医療費用の保険料、これも一種の貯蓄なんです。こういうものを今度は控除の対象に入れていくという、これはある意味では生保業界の育成にもなるのだろうと思うのです。政治的な意味はあるのかもわかりません。しかし、純粋な論理からいくと、一方では課税をしていきます、一方では免税措置を深めます、こういう形は今の貯蓄制度に対応した今度のやり方の中で逆になっているのじゃないか、矛盾しているのではないかという感じも私はする一人なのであります。
 だから、マル優が廃止された場合、ふえるだろうか減るだろうか、あるいはまた一方でこういうものを優遇していく措置は合理性があるのだろうかという疑問を持ちます。これは先生方それぞれからお答えをいただきたいと思います。
○中村参考人 お答えいたします。
 マル優が外されて悔しいから減らすと本当なら申し上げたいのですけれども、庶民はなおさらもっと貯金しないと老後が心配だとか、教育費が大変だということになるのではないかと思います。それから、今までごまかしていた方たちは、ごまかしていたわけじゃないのかもしれませんが、三五%から二〇%になるわけですから、そういう方たちはそれをもっと使うという形になるのじゃないかと思います。
 それから、生命保険の問題でございますが、確かに先生おっしゃったように、マル優を外しておいてそちらをやるというのはちょっと矛盾があるように思いますけれども、庶民にとっては、今生命保険というのは、何か問題が起こったときにあとの家族のためにどうしても残しておかなければならないということで控除の対象にしてほしい。それからまた、マンションを買いますと、いやでも保険に入らなければ買えないという現状もございます。それは家の方にとられてしまいますので、あともう一つ今度は家族のために入っていなければならないという問題がございますので、それはやはり今の段階では控除にしていただいた方がよろしいと思います。
○井上(隆)参考人 最初に私がお話しさせていただきましたように、マル優を廃止しても今までの貯蓄は余り減らないと思っております。
 先般、私はオーストラリアへいろいろ勉強に行ってきました。そのきっかけは、御承知のように、オーストラリア・ドル建て外貨預金とかニュージーランド・ドル建て外貨預金というのは、日本の定期預金と違って非常に高金利で、マスコミ等を使って預貯金が集められておるわけでございます。そこで、それじゃオーストラリアの金融事情はどうであろうかということで行ってきたわけでございますが、向こうのバンカーたちから逆に私に質問がありまして、日本のマル優はどうなったと言うわけです。それで、私はびっくりしまして事情を聞きましたら、現行税制では外貨預金についてはマル優が効かないわけです。ですから、マル優が廃止になって国内預金同様に一律分離になれば、当行の外貨預金が非常に集まるとい
うので大変期待しておるわけです。
 オーストラリアあたりの金利はインフレ的な要素もございますので、一年定期でも一〇%以上ついておる。そういうこともございまして、マル優廃止と同時に、お金は低利よりも高利に流れるから外国へお金がどんどん出ていってしまう。金投資もプラチナ投資もそれと同様でございます。したがって、ここでマル優を廃止することによってお金が外国へ一気に出て、産業の空洞化ということも今言われておりますが、私はこれをきっかけに金融の空洞化が起こるということを非常に心配しておる一人でございます。
○沢田委員 委員長、時間は少しあるのですが、ちょうど一時間以上たちましたから、次の人の時間をとって休憩したのでは申しわけありませんので、ここで終わりにして少し休憩してもらって、その後で質問していただくようにお願いいたします。
 以上で終わります。どうもありがとうございました。
○笹山委員長代理 ちょっと速記をとめてください。
    〔速記中止〕
○笹山委員長代理 速記を始めてください。
 山田英介君。
○山田委員 参考人の先生方には、大変お忙しい中を当委員会に御出席いただき、貴重な御意見をお聞かせいただきましてありがとうございます。私どもといたしましても、先生方のいろいろな考え方をしっかり踏まえて参考にさせていただいて、今後の審議等に生かしてまいりたいと存じておる次第でございます。
 そこで最初に、六十二年度の減税の規模につきまして、御案内のとおり、政府では一兆三千億円ということで法案の提出をされたわけでございますが、その後の経緯で今日まで二千四百億円上積みということになってきておるわけでございます。この一兆五千四百億円というのは、参考人の先生方から見まして妥当な規模であるのか。そしてこの財源につきましては、六十一年度の決算剰余金の一兆三千億円プラス、先日の当委員会における宮澤大臣の御答弁では、政府がいろいろとつじつまを合わせ、やりくりをしてそこは対応するようになるだろう、このような趣旨の御発言があったわけでございますが、この財源につきましてそれぞれの参考人の先生方からまずお聞かせをいただきたいと存じます。
○中村参考人 野党の方は、二兆円までは頑張るというお話だったと思います。それで私は二兆円に大いに期待しておりました。私どもの周りを見ておりますと、株でもうけた方、土地成金の方、円高の問題やら、脱税している方もあるし、いろいろある、そういうところをもっときちっと正せばまだまだやれるところがあるのではないか、国民はそういうふうに見ております。そして、マル優はやらなくていいのじゃないか、また重ねて申し上げますけれども、そういうふうに考えております。
○井上(隆)参考人 減税規模が多ければ多いほど、我々国民にとったはいいことでございます。それで、先ほどの数字が妥当なものかどうかということは、それらのいろいろな資料については当局が全部把握しているので、どのくらいがいいかという、その数字的には私はよくわからないわけでございます。
 ただ、御承知のように、現在国債の発行残高が百五十兆円を超えているというか、そういうように国も財政が火の車、そういう中で減税を行うということでございますが、余り減税を多く主張しますと、それがきっかけになって大型間接税の導入というか、そういうことにもなろうかと思いますので、この問題については非常に難しく、結論めいたことは私自身なかなか考えつかないのが実情でございます。
○原参考人 お答えいたします。
 減税規模というのはやはり財源面で限りがありますから、したがってそれとの突き合わせが必要なので、何でもかんでも大きい方がいいとは言えないのですが、私が先ほどから申しておりますように、今の内外の経済情勢というのを前提にした条件を考えますと、やはり内需拡大、今言った減税がどの程度内需拡大と結びつくかというのは一概に申せませんけれども、方向性としては結びつく可能性が高いわけでございますから、やはり積極的な内需拡大策と対応せしめて、また国際公約である大幅な減税はやっていただきたい、こういうことでございますので、二兆円実現できるならそれに近づける努力は今後ともやっていただきたいと考えております。
 今度の減税、これは昨日ですか一昨日ですか、お話し合いがあったそうでございますけれども、その形で整理しますと、平年度ベースで大体二兆二千億ぐらいにやがてなるだろうということになっておりますから、将来は二兆円に達するということがあるかもしれませんですけれども、現在はちょっとそれが達し得ないわけでございますけれども、そういう努力はしていただきたいと思います。そうした方が、やはり内需に好影響が出ることは確かでございましょう。
 それから、その場合の財源でございますけれども、マル優問題が絡んでおりますが、日本の六十一年三月の貯蓄残高が五百兆円ぐらいございまして、その中で非課税になっております貯蓄残高が二百九十兆ぐらいと言われておりますので、その辺のところから先ほど申しましたような手直し、六百万円以下は税額を還付すればどうかと私は申しましたのですが、そういう弱者保護のための政策措置を講じた上でも、それに対して大体四%くらいの税率を考えましても二兆円近くは出ることが可能性としては考え得るということでございます。そういうこともあります。それから、NTTで三兆円くらいは何とかなる。四兆円とありましたけれども、そういうことは……。これは恒久財源としてはちょっと無理なんでございますけれども、そういうこともありますし、それからさらに、先ほど御指摘ございましたような一兆三千億の余裕財源というものが、これは補正予算で繰り入れした後に残として出てくるということがございましょう。これも恒久財源としては問題がありますけれども、現実に余ってきているということでございます。
 その上に重要なのはやはり行革でございまして、幾らそういう形でやりましても、底のあいたざるみたいなものですくっては何にもならないわけでございますので、やはり財政支出を必要なところに行うというような形でやっていく、効果をねらうという形でやっていただきたいということでございますから、その辺、アングラマネーをできるだけ徴税効果を上げて吸収していく、同時に、今言った形でむだ遣いしないような制度を講じながら御配慮をしていただきたいというのが私の希望でございまして、二兆円に達すればいいの達しなければだめだというようなことはもちろん考えておりません。
 以上であります。
○関本参考人 お答え申し上げます。
 今回の減税規模がどうかという御質問でございますけれども、規模といたしましては、税率の手直しということだけではなくて課税最低限の大幅引き上げがどうしても必要である、そのためには一兆数千億というような規模ではなくて、少なくとも三兆円規模の減税はどうしても必要ではないか、このように考えるわけでございます。課税最低限が少なくとも生活保護法による生活扶助基準を上回らなければならない、こういう考え方が私の基本制な考え方でございますので、そういう形での減税ということになりますと少なくとも三兆円規模にはなるのではないかというふうに考えます。
 なお、財源の問題でございますけれども、これにつきましては、現在ございます大企業、大資産家に対するいろいろな減免税措置を是正することによって、国税だけで少なくとも三兆円から四兆円の財源は十分確保できるわけでございますから、こういう不公平税制の是正によってこの所得減税の財源の確保は十分可能である、このように
考えております。

○山田委員 この減税財源に関連してでございますが、原参考人からは、特にNTTの株式の売却金の一部など、確かに恒久財源ではないけれども、抜本的な税制改革というものがこの後に控えているということを前提にすれば、もう少し思い切った措置をすることができたのではないかという趣旨のお話があったかと思います。
 NTT株式の売却金の一部を減税の財源とすることにつきましては、私どもそうすべきなのではないかというふうに考えているわけでございます。宮澤大臣は、よくおっしゃいますことに、社会資本として残らない減税財源として食いつぶしてしまうのはいかがなものか、そういうお考えのようでございますが、これは政策の選択の問題でございまして、絶対できないという趣旨のものではないわけでございます。この減税の効果というのは、御案内のとおり、可処分所得をふやす、それが個人消費の喚起につながり、景気全体の底上げにも影響を及ぼしてきて、回り回って国の税収増加にもつながってくるということで、ただ単に食いつぶしてしまうということにならないのだろうというふうに私は思っております。したがいまして、原参考人を除きまして、あと三人の参考人の方々の御意見をお聞かせを賜りたいと存じます。
○中村参考人 私も、そのように思います。
○井上(隆)参考人 お答えいたします。
 NTTの売却益については、恒久財源ではないわけでしょうが、やはり諸外国から内需拡大を強く要請されている現状にかんがみ、NTTの株の売却益を減税財源に充てるのは緊急やむを得ない事態でよろしいのではないかと思います。
○関本参考人 お答えいたします。
 NTTの株の売却代金というものは本来国債整理基金に繰り入れるべきものでございますので、これは減税財源に繰り入れてしまうということはいかがかというふうに考えるわけです。それでは財源はという問題がございますが、先ほどちょっと申し忘れましたが、不要不急の支出ということになりますと、何をさておきましても日本国憲法に違反した軍事費の大増額を削りさえすれば、かなりの額の減税の上積みは十分可能である、このように考えております。

○山田委員 関本参考人にお伺いいたしますが、利子配当所得は勤労所得よりむしろ担税力が大きい、そこに着目をして今回のマル優原則廃止というような形がいきなりまた再び持ち出されてきた。これは、実は税制調査会の一つの意見として、大勢を占める意見としてこういうような考え方がベースにあって、マル優廃止という形につながってきているわけでございますが、マル優利用の利子所得というのは当然可処分所得と一体不可分のものでございまして、営々と働き、そしてその中から病気のためとか子弟の教育費のためとか、あるいはまた老後のためとかというようなはっきりとした目的を持って貯蓄をしているわけでございます。
    〔笹山委員長代理退席、委員長着席〕
 ですから、単純にそこだけ切り離した形で、利子所得というのは資産所得の一種であって、勤労所得よりか担税力は非常にあるのだからマル優は原則廃止していいのではないかという理屈は、私は、現実あるいは実情というものを全く考慮に入れていない考え方ではないのか、こういうふうに思えてならないわけでございます。御意見がございましたら伺いたいと存じます。
○関本参考人 私も全く同意見でございます。
 一つには、同じ利子所得でございましても、勤労者の零細な利子所得と大資産家、高額所得者の高額な預金の利子というものはおのずから担税力に大きな差異がある、このようにこういうものを質的に区分して考える必要があるのではないか。そういう意味では、いわば勤労者の零細な預金、つまりマル優の対象になっております勤労者の預金でございますけれども、このようなものはまさに先生のおっしゃるように勤労者の重要な生活の原資になっているというように考えますので、これと大資産家の高額な預金利子あるいは株の配当等を同列に論ずるということは全く理不尽である、このように考えております。

○山田委員 同じ角度から中村参考人にお伺いしたいのですが、また税制調査会等の考え方の背景には、剰余によりまして土地を購入して獲得をする地代だとか株式を購入して得る配当金、そういうものと預貯金の利子というのは本質的に異なるものではない、したがって、マル優は制度として原則廃止していいのではないかという議論にもつながっていっているわけでございますが、いわゆる非課税限度枠をかなり残して利用をしている方々が大部分であるわけでございますので、現実にはみずからの居住用の土地あるいは不動産を持っている、それ以外に土地を剰余があるからゆとりのあるお金で買えるかといったら、私自身も含めて、私の身の回りを見ておりましてもそういう姿は一般的にないわけでございます。居住用の土地あるいはマイホームのローンの返済で四苦八苦をしておる。そういう中で預貯金の利子については、マル優制度の一つの大きなよい影響というものがあるわけでございます。
 したがいまして、こういう理屈は、そういう高額所得者あるいは経済的に非常に余裕のある方々は全体から見れば少数だろう、小さな部分だろうと思うのです。そういう方々については確かに言えると思うのですが、実際にはこういうことはないのではないかと私は思っておるのです。実際に中村参考人のお立場で、現実にふだんからごらんになっておられる点がございましたら、お聞かせをいただきたいと思います。
○中村参考人 お答えいたします。
 全くお話のとおりだと思います。私どもの中でよく話が出るのですけれども、給料をいただいて税金を相当高く払って、その残りを営々として、暮らしの中に使った後何とか残してそれを貯金しているのだ、その貯金の利息に何でまた税金がかかるのだろうか、それは何としても納得がいかない。お金もうけのために我々は貯金しているのではないし、それを使って商売するわけでもない。それは我々の税金を払った後、暮らしの中から積み立てたお金なんだから、そこからまた取られるというのは二重取りのような気がする、そういう声がいつも話し合いの中で出てまいります。ですから、そういう庶民の感覚と、お金持ちがいろいろな形でやりとりする大きなお金と同じというのは、お金に色はないかもしれませんけれども、性格が違うのではないかというふうに考えております。
○山田委員 マル優制度の問題につきましてちょっと固めてお伺いをしたいと思います。
 まず課税の総合主義といいますか、所得課税にありましてはすべての所得を一回総合してそこに税率を掛けていく、この総合課税主義というものが我が国の税制度の一つの大きな原理原則というふうに私は理解しておるわけでございます。それで、少なくとも現行の少額貯蓄等非課税制度の姿というのは、原則総合課税という形が残されております。そして、分離課税も選択できる形になっているわけでございます。ところが、今回政府が提案をし、これを強行しようとしているマル優原則廃止というのは、すべての預貯金の利子に対して一律に二〇%をいただこうということで、総合課税主義の原理原則から完全に離れてしまう形が出てくるわけでございます。
 これは特に井上参考人から伺いたいのでございますが、一つの我が国の課税の原則のあり方からして、あるいは世界の一つの課税の理念といいますか、そういうあり方からいたしまして、この点はどういうふうにごらんになっておられるのか、お伺いしたいと存じます。
○井上(隆)参考人 お答えいたします。
 日本の場合、原則総合課税ということでございますが、世界の先進諸国もやはり総合課税が基本でございます。今般、いわゆる非課税制度を原則廃止ということで、先ほどもお話ししたわけですが、英国のサッチャー首相がベネチア・サミットで中曽根首相に、内需拡大になるということで強
く廃止を求めたということが一般に伝わっているわけでございます。しかし私、これはあくまでも推測なんですが、サッチャー首相自身、日本がマル優を廃止したら、当然のことながら世界の先進諸国と同様に総合課税に移行するんではないかというので、何か思い違いをしているんじゃないかと思うわけです。そういうような状態でマル優を原則廃止して一律分離課税に移行したということがわかると、またまた日米、日英等でいろんな意味で摩擦が起こるというか、そういう気がしてならないわけでございます。
 ですから、その点についてやはり国際理解を求める意味で、サッチャー首相等に日本の税制のあり方というか、そういうものを事前にぜひお話ししておいていただきたいと、私は個人的に思っているわけでございます。
○山田委員 ただいまの御答弁に関連するわけでございますが、現行では選択分離課税で三五%、これが仮に新しい制度に移行するなんということになりますと一律に二〇%。ただいまの御答弁にもありましたようなそういう一つの原理原則というのは、我が国においても、あるいは世界の大きな一つの流れといたしましても、総合課税主義というものが厳然とあるというお話でございますが、そうなりますと、今政府はマル優を廃止という言葉じゃなくて改組というふうにおっしゃっておられるわけですが、私はできる限り、改組にしても何にしてもなさるとすれば、この総合課税主義の原則に近づけていくという方向での努力というものが、必要不可欠なものであるというふうに思わざるを得ないわけでございます。
 そこで、総合課税を残し選択分離課税の道も残しという、例えばそういうことであれば、選択分離課税の税率を三五%というレベルに置かないで、例えばそれを五〇%というふうにして、そしてやはり総合課税にできるだけ皆さんがそちらの方を選んでいく、あるいはそちらに吸収されていく、そういう一つのやり方、政策というものは私は必要なんじゃないかな、このように思うわけでございます。
 私どもの立場というのは、マル優は、断じてこの制度は残していただきたい、残さなければならないという立場から、まあ応用編ではありませんがそういう角度から伺っているわけでございますが、よろしければ中村参考人から御意見を伺いたいと思います。
○中村参考人 大変難しいことばかりお聞きになるのであれなんですけれども、総合課税ということを、総合累進課税ですか、それはやはり基本的にはやるべきだというふうに考えております。ただ、それを今おっしゃったように、五〇%とおっしゃいましたけれども、そういうような形がいいのかどうかというのは、ちょっと今突然でわかりかねますけれども、今度総合課税を、総合累進課税ですか、それがなくなってしまうということはやはり問題で、そこのところは何としても何とか考えてもとに戻す形を、もともと両方を選べるようにしたところに問題があったんだと思いますけれども、そこのところを何とかお考えいただきたいというふうには考えております。
○山田委員 それでは井上参考人にもう一度お伺いいたしますが、総合課税という形に一本化していくあるいはそこを確立していくことが、やはり税制改革という面から見ても私は正しい方向であろうと思うわけでございますが、例えば同じ改組ということであれば、分離課税を三五%ということじゃなくてもうちょっと高目に設定をして、そうしてできるだけ総合課税にした方がいいなという、そういう誘導を政策的に行うということはこれはいかがなものでございましょうか。
○井上(隆)参考人 今回の所得税法一部改正案、そのもとになるのは原則マル優廃止ということでございます。しかしこの問題については、先般売上税に関連して原衆議院議長のいわゆる裁定案にございましたように、直間比率の是正などを含めて税制全般を検討した上で、その一環としてマル優問題が出てくるわけで、今回のようにマル優だけを取り出してそれだけを小手先だけで廃止云々というのは、将来税制改正の上において余り好ましくないわけでございまして、いわゆる税制全般、直間比率の是正を含めた上でマル優問題は検討すべきで、これだけを抜き出して今回廃止云々というのはいわゆる小手先だけの税制改正というか、何かそういう気がいたします。
○山田委員 原参考人に御意見をいただきたいのでございますが、税制中立というような立場から、できるだけマル優制度の改組といいますか、原則廃止等によりまして資金シフトが急激に起こらないことが好ましい。これは、関係御当局の責任者の皆さんからもそういう御答弁も出ておりますし、現実に我が国の経済社会を考えた場合にあるいは金融の現実等を考えてみても、それはそのとおりだろうと思うのです。
 そこで、今回マル優が仮に原則廃止されると、では実際に資金シフトというのが起こるのかどうかという、この辺につきましてお伺いをしたいんですが、手元にある資料でございますけれども、例えば証券投資信託協会というところが調査をし発表した資料などは、昨年の例えば十二月中の投資信託の概況などで、非常に出し入れが簡単な短期性の中期国債ファンド、この利用者と利用額が非常に急増している、こういう事実があるそうでございます。
 それから、これは日銀の調べでございますが、大変超低金利の時代でございますけれども、普通預金に法人及び個人が余裕資金を預ける、一番低金利の普通預金に法人、個人とも余剰資金を預け入れている、これが相当の伸び率になっておりまして、その傾向は今日まで基本的に変わっていないだろう、こう思われるわけでございますが、現実にはやはりこのマル優原則廃止が行われますと、相当規模の資金シフトが起こりまして、我が国の金融、経済、こういうところに与える影響が看過できないような事態も心配されるわけでございます。この辺につきまして御意見を賜りたいと存じます。
○原参考人 お答えいたします。
 確かに、御指摘になりましたようなおそれはございます。ただ現実には、その資金シフトが行われるかどうかというのは、例えばマル優の改正の場合に、ほかにどういう政策をとるかということですね。これとか、そのときのマネーサプライの動向、金融情勢いかん、それから国民心理的なものが大変影響するのだろうと考えます。
 今回のマル優の手直しによりまして御指摘のような、例えば短期性の中期国債ファンドに対する資金のシフトが行われるという可能性もございましょうけれども、今回の場合にはそういう資金シフトをある程度チェックする意味で、例えば外貨建て預金の利子につきましても、それから一時払いの養老保険の利子につきましても税率を高めまして、いわばそういう方に流れるのを防ぐような一応の政策がとられておりますね、他の金融資産の利子に対する課税の税率を高めるという形で。ですから、その政策措置は今回の税制改正で一応とられているということで、雪崩的なシフトが行われることはそうないのじゃなかろうか。それは今言った政策と、それからもう一つは、現在のマネーサプライの状況を見ていきますと資金が非常に不足しておりまして、手元にある乏しい資金をこういうところに急いで運用しなければいかぬという情勢でも必ずしもない、こういうことでございます。
 国民心理もそうでございまして、現在ですら定期預金の金利はそう高くないわけでございますから、したがって、そういう状況のもとで早くシフトさせなければ大損するんだというような心理にはそうなっていないということでございますので、それほど大きな資金的な流れはない、私はこう考えております。
 それとまた裏腹の関係になるわけですけれども、そうしたわけですから、したがって慌てふためいて資金シフトをやらなくてもいいけれども、常に資金の流動性を高めようという心理があろうかと思うのですね。これは財テクばやりでございまして、かなりの人が関心を持っております。主
婦であれ老人であれ持っております。自分の持っております金融資産をいかにして高利に運用しようかということで関心も高まっておりますので、そういう面から考えますと、少々の金利を手に入れるよりは普通預金にとどめておきまして、そしてチャンスがあれば株式を買うとか、あるいは場合によって今言ったようなファンドを買うというような形で、流動性を十分に生かして財テクを行おうという意識が強くなった。これは、ある意味では防衛的なものがあるかもしれませんから、必ずしも好ましいとは一概に言えないかとは思いますけれども、そういう動きも出ているということじゃないかと考えております。
○山田委員 今回の六十二年度の所得税減税にいたしましても、それからマル優原則廃止ということにいたしましても、これは政府にありましては全体の税制改革の一環である、こういう位置づけをされているわけでございます。ただしかし、では現実に全体の税制改革のプログラムというものが提示をされていて、そしてその中に明確な形でマル優の原則廃止というものが組み込まれているのか、位置づけられているのかといいますと、そうではないと私は思っております。
 既に三カ月ほど前の前通常国会におきまして、売上税創設、マル優廃止を財源といたしまして法人税の減税、所得税の減税、これが中曽根総理が示された税制改革の全体像であったわけでございます。ところが、その一番大もとになる売上税の創設、関連してマル優の廃止ということもいわば国民の大きな反対の力等によりまして、これは三カ月前に廃案になったばかりでございます。そういう経緯からも明らかなように、冒頭申し上げましたように今回の税制改革の一環だと言いながら、現実にはその全体像が示されていない、そういう中でこのマル優の廃止ということが突然また出てきた。こういうことで私どもは、それがいい悪いは別といたしまして、総理が目指された税制改革というのは、キーワードというのは直間比率の是正であった、これは間違いないと思うわけでございます。ところが、今なさろうとしております、そしてそれは税制改革の一環だと位置づけられておりますが、直接税の中におけるいわゆる減税と増税という直直の間の調整にしかすぎない、こう言わざるを得ないと思うわけでございます。
 したがいまして、私たちは、六十二年度の所得税の減税と、それから税制改革全体のプログラムをこれから改めて構築をしていく、その中に当然位置づけされるべきマル優の廃止、これは切り離すべきだ、そしてまた国会に切り離した形で提案をなさるべきだ、こういう立場に立っているわけでございます。そういうことを考えまして、ワンセットでこれを出してこられたわけですが、将来もあることでございますので、こういうやり方、あるいは税制改革の全体像が示されていないこの段階で、マル優だけここで取り上げて性急にこれを原則廃止にするというようななさり方、そういうことをちょっとあわせまして井上先生、ひとつ御意見を賜りたいと思います。
○井上(隆)参考人 先ほどもお話ししましたように、直間比率の是正を含めた全体の中のマル優問題として取り扱うべきであって、やはり切り離した形で、先生がおっしゃった直接税関係でプラス・マイナスというのは余りよくないと思います。
 マル優問題については、売上税のときみたいに一般的な反対意見というのが余り表面に出てこない、そういう面も今現在あるわけですが、一般の主婦層に非常に関心が強うございます。その強さというと、売上税よりもあるのではないかと私は思います。私ごとで恐縮ですが、民放のテレビで毎週財テク講座等をやっておりますが、売上税の問題のときも毎週私は取り扱ってお話ししていたわけですが、特に時間帯が主婦番組なのです。ところが、売上税の問題を扱って毎週こういきますと、視聴率がどんどん下がっていったわけです。ところが、マル優の問題とか相続税の問題、これは非常に関心があるということで視聴率が上がっているというか、そういう実情でございます。
 私ごとで恐縮ですが、売上税のときにもある出版社から本を出したわけでございますが、今度またほかの出版社からマル優についての執筆依頼がありまして、そこでいろいろ市場調査等をしましたら、一般の方は売上税よりもマル優の方が関心があるというわけです。したがって、井上さん、絶対に前の売上税よりも売れるから、いわゆる初版部数をふやすから本を出せというので、そういうようなことが今言われておる現状なので、この問題については、今お話ししたような私の二、三の体験で恐縮でございますが、売上税よりもマル優について一般の人は関心が絶対に高いと私は確信しているわけでございます。ですから、余計慎重にこの問題を取り扱っていただければと思います。
○山田委員 持ち時間が来たようでございますので、最後に一つだけお伺いをさしていただきますが、今回の所得税法等改正法案の中には、土地税制についても改変あるいは新設その他いろいろ盛り込まれているわけでございますが、新設をされる土地税制の一つに、超短期の土地の譲渡所得に対する重課制度を導入するという部分がございます。二年以内の保有の土地を譲渡した場合には大変な重課をというところですが、先ほど井上参考人からもお話ございましたように、地価の高騰の大もとの原因というのは土地の供給が小さ過ぎるんだ、そのとおりだと思います。それからまた、いろいろな要因がありまして、今日の特に大都市部を中心とした地価の高騰があるわけでございますが、超短期の譲渡所得に対する重課制度の導入というのは、いわば転々売買をする土地転がしについての歯どめを図ろうというねらいがあるんだろうと私は思いますが、これが果たして有効に機能するのかどうかというところを心配をしているわけでございます。
 といいますのは、ちょっと専門的なことになるかもしれませんが、所有権を移転をした場合には基本的には所有権移転の登記をするわけでございますが、現実には中間省略登記というものが認められ、存在しておりまして、私の調査したところでは大体二件に一件が中間省略の登記。すなわちそれは、AからB、BからC、CからD、DからEというふうにずっと転々流通していきましても、その取引の段階が例えば一カ月、二カ月で十段階の取引があったとしても、AとGで、最終の取得者との間で所有権の登記をすれば、それで転々売買その段階ごとに登記をしたことと同じ効果を持つという形になっております。
 それで、二年というのは現実には実感としては非常に長いのです。数日のうちに五回、六回転売される、あるいは数カ月のうちに十回以上転売される、その都度に坪百万ずつ上がっていくとかというふうな実態はあちらこちらに見られるわけでございます。したがって、そこのところの転々流通のAから仮にGのこの取引が、実際にはその取引はないわけですが、中間を省略してもいいという一つの登記制度のあり方なども、不動産取引の世界の限りなく不透明に近い部分の基本をなしている一番の中心部分である。このいわばブラックボックスみたいなところを明らかにしていかないと、逆に限りなく透明に近づけていかないと、なかなか土地転がしによる地価のつり上げ、暴騰という、私権制限論とか出ておりますけれども、いろいろやっても結局そこに抜け道があると実効が上がらないのではないかということを、私は強く心配をしているわけでございます。そういう考え方を私は国会議員の一人として持っているということを、参考人の先生方にも念頭のどこかに置いておいていただくということで、御答弁は結構だと存じます。
 長時間にわたりまして御答弁ありがとうございました。終わります。
○池田委員長 安倍基雄君。
○安倍(基)委員 参考人の皆様、本当に長時間御苦労さまでございます。同僚議員がいろいろ質問した後でございますので、重複を避けてお聞きしたいと思いますけれども、特に最初の中村参老人、私はさっき言われた会合に出ておりまして、
マル優についての意見を述べましたし、固定資産税についての意見も述べたのでございます。その際、私はお話ししたことと思いますし、地元なんかを回っても賛同を受けるのは、少なくとも一納税者一口とかあるいは一世帯一口とか、そのくらいは見てもらってもいいのじゃないかなということをしきりと主張してきたわけでございます。
 その際に我が党は、マル優カードを使う、あるいは還付、つまり銀行から最終的にこのくらいの分だけはマル優扱いしてくださいという、還付をする方法がいいのではないかなという話をしているわけでございます。マル優カードというのは、背番号式と大分誤解されやすいのですけれども、一つのカードをそれぞれみんなが持って、マル優適用を受けたい人はそれを銀行の窓口に持っていく。例えば、二百万円ぐらいでまだ余っていれば別のところに持っていってもいい、二、三口でもいい。この制度が発足するときには、一店舗で幾らということで限定されておった。それが、金融機関が、大銀行にばかり集まってしまうからという話で、何口もできるようになった。その意味では、一番最初は限度管理が徹底されておったわけです。それができなくなって名寄せが難しくなった。しかし、我々としては、マル優カードの中に全部自分の預金を書き込む必要はないのだ、いわば特例適用を受けたい分だけ書き込んでいけばいい。それがいっぱいになったら、それ以外のものはマル優適用を受けないのだから、当然高い税率はかかる、それでもいいじゃないかという議論を展開してきているわけです。
 これは背番号制度と非常に間違われやすくて、マル優カードというとすぐ例のグリーンカード――グリーンカードは、内容的にはそういった中身だったらしいのです。そのころ、すべての預金全部書かなければいけないというような印象をみんなが持ってだめになった。しかし、売上税でこれだけみんなの関心が高くなった状況のもとにおいて、マル優カードで少なくとも一世帯一口あるいは一納税者一口ということで、さっきも同僚議員から話がございましたけれども、その範囲内では特例扱いする、ほかのものは相当高い率を適用してもいいじゃないか。そうすると、また逆に総合課税を選択するか分離課税を選択するかということになる。でございますから、マル優カードの一世帯一口、一納税者一口という考え方について、私どもは二十分しか時間がないものですから、各先生に簡単にお考えをお聞きしたいと思います。
○中村参考人 この前の会でも先生からそういうお話を伺いまして、私どもも基本的には限度管理をきちっとすればやれるのじゃないかと考えておりますけれども、それも一つの方策かもしれない。今クレジットカードが個人信用情報で、与信の問題を調べるのにコンピューターで名寄せをしておりますから、個人のプライバシーの問題が非常に言われておりますので、その点をどう担保するかということをきちっと考えて具体的にまたお示しいただければ、私どもも考えてみたいと思います。
○井上(隆)参考人 お答えいたします。
 過去において廃止になりましたグリーンカードがいいか、今先生がおっしゃったマル優カードがいいかというのは、実際問題としてやってみなければわからないという面もございますが、昨年の一月から新マル優制度、本人確認制度ができたわけでございます。御承知のようにグリーンカード法案が通って、その結果予算案が執行されて埼玉県朝霞市には事務管理センターもでき上がっている状況でございます。それと同時に、現在税務行政においても、例えば法人とか個人でしょっちゅう確定申告をする場合は、当局の方で納税者番号をつけておる実情がございます。そういうことを勘案すれば、昨年一月以降実施したいわゆる新マル優制度が成熟するに従って、年を経るに従って限度額管理はできると私は確信しております。
○原参考人 方法につきましてはいろいろあろうかと思いますが、私は、こういうのはほかの資産性のものと一緒にして総合的に検討しろという立場に立っておりますので、余り窓口を広げたくないので、やはり社会的弱者に対しての特例を講じた方がいいという考え方ですが、そうした人に対してもそういう方法でカードを発行するということができるだろうと思います。ただ、カードがいいか一律の還付がいいかということになりますと、これは徴税コストの問題になってまいりますので、その辺のところを検討しましていい方法を採用すればいい、そういう立場におります。
○関本参考人 この限度管理の問題につきましては、基本的には情報公開制度とプライバシーの保護に関する制度的な保障の確立が先決問題ではないか、かように私は考えている次第でございます。現在地方自治体では、既に情報公開に関する条例等ができているところもありますし、それによって成果を上げているところもありますので、こういうものを国政レベルでもどんどん確立していっていただきたい。同時に、プライバシーの保護も図られるべきである。そういうことが我が国の場合は非常におくれておりますので、これをそのままにして限度管理あるいは納税者番号のようなものが入ってきますと、現在でも官公庁による情報の独占、秘匿というようなことが非常に行われておりますので、そういう点でかなりの問題が出てくるのではないか。例えば、私どもいろいろ税制等について検討しようと思って情報を集めようとするのですけれども、大蔵省さん、なかなかガードがかたくて、統計的な資料もなかなか発表していただけないというようなこともございますので、この辺は公正な税制確立のために、大蔵省さんが勇気を奮ってどんどん情報公開をしていただきたいとお願いしたいわけであります。
 ちなみに、アメリカでは租税歳出予算という制度がございまして、予算に例えば租税特別措置等によってどの程度の減税がされているかということが、項目別に全部議会に提出されております。したがって、どの項目を整理すると幾らの増収があるということが全部わかりますので、そういう点で非常に民主的な統制が行われているというふうに聞いております。

○安倍(基)委員 いろいろあれの議論の過程でも出てきたのですけれども、今度のいわゆる老齢者の場合でも、さっきもお話が出たと思いますが、それを何口もやるということもあり得るのですよ。その面で、やはりマル優カードという方が本当の意味で限度管理がきちっとできるのじゃないか。それに何もかも書かなくてはいけない、ほかの預金まで書かなくてはいけないというようなことになりますと、それは本当に洗いざらい見せることになるけれども、そうじゃなくて、その特例を受けたい分だけ書けばということであれば、それ以外は全部隠せる。隠すというと悪いですけれども、その部分以外のものにはちゃんとした税がかかるわけですから、この制度は検討に値するのじゃないか。
 一世帯がいいのか、一納税者一つがいいのかということで、私としてはそれを大いに主張しているのですけれども、じゃなければ、年末調整のときに、また例えば生命保険料控除とか損害保険の控除と同じような意味で、要するに三百万なり五百万の利子分のあれを持っていけば引いてくれるということが一つの案として考えられております。私どもは、それを今国会で主張しているのですが、多勢に無勢で実現しないかもしれないので、この辺はまことに残念でございます。
 時間がございませんが、実はさっきの土地税制の問題、今お話も出ましたけれども、私たまたま「エコノミスト」に論文を書いたのです。ところが、表題は大都市災害と土地政策ということで書いたのが、保有税を上げて宅地の供給を図れというぐあいに非常にどぎつい表現になっているのでございますけれども、これとの関連で、保有税の問題というか、今いみじくも井上参考人が言われましたように、企業などがやっている大きなビルなんかがえらい安いのはおかしい、個人であっても、千代田区とかど真ん中にいる人々は、これはほかの人の犠牲においているようなものですから、むしろ土地保有税を上げれば高層化を図ると
かマンション化を図るということで効率利用ができるだろう、まさに井上参考人と同じ意見でございます。
 これとの関連で井上参考人にお聞きしたいのですけれども、今ちょうど前の同僚議員がちょっと提示されましたけれども、今度長期のを十年を五年にするわけですね。その今度の改正についてどうお考えになるか。私もその辺はちょうど同じ意見で、私は保有税を上げても譲渡税はむしろ下げるという感触を持っているのでございますけれども、今度の土地税制の改正、今たまたま前の質問者が言われた、短期の土地転がしじゃなくて、十年を五年にするという土地税制の改正についてどうお考えになるか。
○井上(隆)参考人 お答えいたします。
 十年を五年にするその理由というのも、私、はっきり申しましてよくわからないわけでございますが、先ほどもお話ししましたが、土地は大都市周辺等においては供給が不足している。そういうことを踏まえて、ぜひその土地を買いたいという場合は、いわゆる売り手市場でございますから、売れば税金を取られるということで、必然的に譲渡所得税等を売却価格にプラスして販売されているというか取引されているのが実情だと思うのですね。
 ですから、一般的に言われる長期保有の土地を売却促進させるためには、財政事情等もあると思いますが、むしろできる限り譲渡所得税を軽くする、それが一番土地の高騰を抑えて、なおかつ土地の供給をもたらす、そう思っているわけで、十年、五年のそれは小手先だけだと私は思います。やはり相当数売り出してもらいたい土地というのは大都市周辺の遊休農地等の供給促進、そういうものを税制の上から図っていただくことによって最終的に内需拡大になり、税収の確保になって、それによって国際経済摩擦というか、その解消になるということをかたく信じているわけでございます。
○安倍(基)委員 土地問題ばかりになってあれですけれども、最近特に言われておりますのが、東京の都心あたりでごっそり物を高値で売る、そして郊外にそれと同じぐらいの値段で買えばともかく余り税がかからぬということで、買いかえで中心部じゃなくて周辺まではんと非常に上がってきているという話が大分問題となってきているのですが、それについて井上さんは、いわば譲渡所得税との関連でどうお考えになるか。
○井上(隆)参考人 お答えいたします。
 俗に都心部の土地等を地上げ屋から買収されるというか、私、いろいろ見ていますと、売りたくて売るわけではないケースが多いのですね。何かいろいろな関係で無理やりに売却させられてしまっている。そこで、そのような状態で売って、後そのままじっとしていると譲渡所得税がいっぱいかかってしまう、それが実情なので、したがって今先生が御指摘のように、郊外へ売却した代金以上のものを買いかえすればいわゆる課税の延期が行われる、そういうことで、一般庶民の方は買いかえを行って、それが原因で郊外の土地が上がっているのも事実だと思います。ですから、そういうようないわゆる悪循環を避ける意味で、先ほどお話ししましたように土地の供給の促進を図るというか、それが一番その問題を解決するかぎになるのではないかと思っております。したがって、余り事業用資産の買いかえの課税強化等はなさらない方がいいわけです。それはいわゆる小手先だけの税制改正で、根本的には土地の供給増大、そういうことに税制改正の根幹を置いていただければと思います。
○安倍(基)委員 それから、あと五分しかございませんが、さっきの中村参考人のお話で、減税をどのくらい上積みするということばかりに重点がいって、制度そのものについての検討が不十分じゃないか。実は私どもも同じような感じを持っているのですが、そんなこと我々が言うのもおかしいのですけれども、本当に事実そういう点があると思うのです。しかも、マル優廃止の問題も、全体の構成の上から直間比率どうするのだ、あるいは資産所得とのあれをどうするのだ。今度はまた逆に資産税、今保有税も含めてすべての全体の中で見ていかなくてはいけない。ただマル優だけ先行してぼんとやっちゃって、いみじくもさっき総合課税の話も出ましたけれども、総合課税をどうするのだというようなことがいろいろあるので、関本参考人には別の質問をいたしますから、最初の三人の方は今度何に大重点を置いてほしいということを、一言ずつお願いしたいと思います。
○中村参考人 お答えいたします。
 何にと言っても、とにかく国民が一番感じているのは不公平感だと思います。ですから、それを解消するためには基本的に密室審議ではなくて、もっとみんなにわかりやすい形で税制論議をしていただきたいということをお願いいたします。
○井上(隆)参考人 お答えを申します。
 マル優の廃止論議等は枝葉末節の論議でございまして、根本的には、先ほど来お話ししている土地税制に基本を置いて税制改革を行っていただきたいと思います。
○原参考人 もっと国際的視点を入れた税制改革を中期的に検討していただきたいと思います。
○安倍(基)委員 ちょっと関本参考人を残したのは、課税最低限の問題なんですけれども、これは課税最低限引き上げというのもいいのだけれども、逆に独身貴族というかそういう面にちょっと、一番中堅の子供を育てる連中が苦しくて、課税最低限だけを強調しますと、独身貴族的なものがふえるのじゃないかというような議論もあるのですけれども、その点どうお考えになりますか。
○関本参考人 お答えいたします。
 課税最低限の問題は、基礎控除、配偶者控除、扶養控除、この人的な控除からなっておりますので、独身の場合は当然、先ほどの百三十二万円とかいうような金額ではなくて現在三十三万円ということになっておりますので、その辺の課税はこの基本的な諸控除を引き上げても、通常の中堅サラリーマンと同じだということはないわけでございます。

○安倍(基)委員 ですから、今度の配偶者控除の引き上げというのがその意味で実質を考えた引き上げた。そういったことではなくて、ただ基礎控除ばかりを引き上げていきますと、独身貴族の問題が起こってくるのじゃないかと私は考えております。
 最後に、もう時間もないのですが、私は今一番問題となっているのは地方税と国税とのアンバランスだと思っているのです。例えば固定資産税というのは地方税ですから、東京はどんどん土地が上がるけれども、そういった大きなビルを持っている連中とかホテルを持っている連中というのはろくに払わないで済む。ただ、幾ら払っても東京はもうかるばかりで、要するに国のあれにならない。国税と地方税とのいわばボーダーラインをもうちょっと考え直さなければいけないのじゃないか。特に土地税制との関連で、そういう議論をしておるのと、もう一つは直間比率もいいけれども、いわゆる勤労所得、資産所得、そして資産税と、その全体のバランスというのを、今大蔵省に言って各国のものを調べさせているのですけれども、そういう見地から考えなければいけないのじゃないかと思うので、もう時間もございませんから評論家としての井上先生にお聞きして、私の質問を終わりたいと思います。
○池田委員長 時間が経過しておりますので、簡潔にお願いいたします。
○井上(隆)参考人 先ほど来お話ししておりますように、マル優だけとか土地税制だけを取り上げるのではなくて、中曽根総理が以前に言ったように戦後、シャウプ勧告以来の大改正というか、そういうことでもございまして、全体的に我が国の将来が国際的に成り立っていくような税制改革、そういうものをしていただければと思います。
○安倍(基)委員 では、終わります。どうも失礼しました。
○池田委員長 正森成二君。
○正森委員 中村参考人に伺います。
 ただいま伺っておりますと、どうも利子課税と
いうのは二重取りみたいな気がする。収入がありますとそこで一遍所得税を取られて、その残ったものの中から一生懸命貯蓄すると、そこからまた取られるという御発言がございました。実は先日の大蔵委員会の議論でも、大蔵省の先輩である徳田という人がいるのですが、野村総研の所長をしておられる人で銀行局長をされた人、その人が最近十年間、大体平均の物価上昇は四・六%で、利子の平均利率が四・八ぐらいだから、利子を加えてやっと貯金は目減りしないんだ、それを利子を全部使うと元本はものすごく目減りするんだから、タコの足を食べているようなものなので、それに何でまた税金をかけなければならないのかという議論をされているのです。それはあなたが今言われた疑問に答えるものだというように思うのですけれども、株だとか土地だとかというのはもともと元の値が上がりますから、それに対して貯金というのは絶対に上がらないのですからというように思うのですけれども、あなたもこの徳田説に御賛成ですか。
○中村参考人 お答えいたします。
 賛成いたします。
 私、この間アメリカへ行ってまいりましたら金融の自由化が進んでおりまして、少額の貯金をしますと、カードなどをつくると逆に利息がつくんじゃなくて元金が目減りするという話が出ております。そうすると、これからどんどん自由化で小口預金もそういうふうになってくると、一体それはどうなるんだろうかという感じもいたします。ですから、大金持ちの方といわゆる庶民とのそこのところを生活の実感で考えていただきたいと思います。
○正森委員 関本参考人に伺いたいと思います。
 先ほどいろいろ意見の御開陳がございまして、同僚委員の質問にも若干お答えになりましたが、みなし法人課税に事業主報酬の制限を設けるというような改正が今度ございます。また白色事業の専従者控除、これが今度四十五万からたしか六十万に引き上げられると思いますけれども、これは専業主婦控除が十六万五千円引き上げられることに比べても少ない上に、自家労賃を正当に評価しているのかというような意見もございますが、この両者を含めて関本参考人の御意見を伺いたいと思います。
○関本参考人 お答えいたします。
 事業主報酬制度というのは我が国に独特の制度でございまして、諸外国ではちょっと例がないのですが、ただ、我が国の場合は自家労賃に対する課税が諸外国よりも格段に厳しくなっておりまして、先ほど申し上げましたように、同居の親族に対する対価の支払いは一切必要経費として認めないというのが所得税の大原則でございますので、その例外として事業主報酬の制度、青色専従者給与の制度、さらにずっと格が下がりまして白色専従者控除の制度というふうになっているわけでございますけれども、この辺は欧米並みに少なくとも自家労賃については、雇われている人と全く同一に認める制度が確立されるならば最も望ましいことでありますし、またヨーロッパ諸国ではそれがまさに社会保障制度と連動いたしまして、それに基づいて家族専従者であっても年金も全く同様にもらえるという制度になっておりますから、そういう観点からいいましても、我が国でも少なくとも先進諸国のそういういいところはぜひとも取り入れて、法制化していっていただきたい。
 それから、事業主報酬の制限が前三年間の八〇%を限度とするということですけれども、せっかく我が国に定着してまいりました自家労賃を、違う形でございますけれども認めるという非常にユニークな制度でございますので、私は根拠がないと思いますけれども、これをクロヨンということを理由にしてみだりに制限することは好ましくないことであると思います。
 それから、白色専従者の四十五万から六十万への引き上げ、これはわずか十五万円でございまして、御指摘のように専業主婦控除の十六・五万円よりもさらに低いということでございます。最近の統計を今私持っておりませんが、青色事業専従者の平均給与額がたしか百四、五十万円どまりだと思います。でございますので、少なくともその程度の平均的な青色専従者給与の辺までは白色専従者についても認めることにならないと、家族労働に対して正当な報酬を認めることにはならないのではないかと考えます。

○正森委員 専業主婦控除についてはいろいろ御意見がございまして、参考人の御意見も多少分かれておりまして、それがいけないというわけじゃないけれども、共稼ぎ婦人とか業者婦人とか、働く婦人はやはり平等に扱ってほしいというのが、先ほど中村参考人から、五十一団体ですかの御意見での最大公約数的な意見だと伺いました。また参考人の中には、そういう制度よりは課税最低限を引き上げるのが筋ではないか、人的控除ですね、という御意見もございました。
 この機会に伺っておきたいと思いますが、課税最低限を引き上げるべきかどうかという点での各国との比較について、関本参考人にもし御意見がございましたらお伺いしたいと思います。
○関本参考人 お答え申し上げます。
 これはちょっと古い資料で申しわけございませんけれども、売上税が国会に上程された当時の資料でございますが、自民党さんが各国の課税最低限の比較を出しておられます。「税制改革Q&A」の中でございますけれども、それで見てまいりますと、あの当時百五十六円か九円で換算されて、日本の課税最低限は世界で最も高い水準にある、このようにパンフレットに書いておられましたけれども、その直前の昨年十一月でございますか、労働省から実質購買力で換算いたしますと一ドル二百三十一円くらいが適正な水準であるという調査が出ております。それに基づいて比較いたしますと、日本の課税最低限は、通常大蔵省では二百三十五・七万円という発表をしておられますけれども、これは給与所得控除あるいは社会保険料控除等をする前の金額でございまして、先ほど申し上げましたように、日本の課税最低限は夫婦子二人で百三十二万円、今度改正されますと、専業主婦控除がある場合には百四十八万五千円ということになるわけでございますが、これと比べますと、アメリカではほぼ三百万円程度、フランスでも三百万円近い金額、イギリスが多少低いと思いますけれども、各国とも我が国よりかなり高い水準になっておりますので、そういう国際比較をいたしますと、我が国の課税最低限はまだまだ非常に低いというふうに考えるわけでございます。今ちょっと資料を散逸いたしましたので申しわけございません。

○正森委員 結構です。
 同じ問題について、井上参考人はどうお考えでございますか。
○井上(隆)参考人 それについては、きょう資料を持ってきていないので具体的な数字は全然申し上げられないわけですが、現行税法において所得税の基礎控除は三十二万円でございますけれども、三十三万円というのは一応本人の生活費ということでございまして、それ一つをとっても、三十三万円で生活できるという人は皆無に近いと思うのです。そういう点で、いわゆる税制改正でいろいろ手直しされるのはいいのですけれども、余り複雑多岐になると専門家でも、もちろん一般の人でもわかりづらくなるわけです。ですから、改正する場合はできるだけ簡素な税制改正というか、そういうものをやっていただかないとわかりづらくなる。一般の人は、よくわからないというと、後で当局の税務調査で何か怒られてしまうのではないか、そういう感覚が非常に強いわけです。私、長年税理士をやって恐縮でございますが、別に税理士が申告代理しなくても、一般の納税者で十分申告できるような簡素な税制改革にしていただきたいという気持ちでいっぱいでございます。
○正森委員 時間の関係でもう一点だけ聞かせていただきますが、今度の税制の法案では加算税が大分加重されておりますけれども、この点について関本参考人、税理士でもございますので、御意見をお願いいたします。
○関本参考人 お答えいたします。
 先ほども御質問がございまして私の見解を申し上げたのですけれども、私は基本的に反対でございます。なぜならばと申しますと、今回の改正に当たりましては、基本的な考え方として、制裁措置の強化によって徴税の確保を図るという徴税当局の姿勢が非常に露骨にあらわれている例である。これはつい先ごろ、時効の延長、それから申告納税制度の改悪ということで私どもは五十九年改正に反対したわけでございますけれども、等もございまして、最近とみにそういう意味でのいわば零細所得階層に対する税務行政上の締めつけが非常に強化されてきているという点で、これはぜひとも考え直していただきたい、このように考えております。
 それから、大変失礼いたしました。先ほどの課税最低限の資料が出てまいりましたので、お答え申し上げます。
 これは自民党さんの「Q&A」では日本が二百五十九・五万円、これは改正案によるものでございます。それからアメリカが二百六・七万円、それからイギリスが八十五・五万円、西ドイツが百四十九・九万円、フランスが二百五十九・○万円、このようになっておりますから、先ほど申し上げましたレートで換算いたしますと、日本が百三十二万円、アメリカが三百万三千円、イギリスが百二十三万七千円、西ドイツが二百四十・七万円、フランスが四百九万円。イギリスが多少低いんですが、あとはすべて我が国よりかなり高い水準にございます。
 以上でございます。

○正森委員 終わります。
○池田委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人各位には、御多用中のところ御出席の上、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。(拍手)
 次回は、明二十八日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時十一分散会


第131回国会 地方行政委員会,大蔵委員会連合審査会公聴会 第1号 平成06.11.21
第116回国会 税制問題等に関する特別委員会 第14号 平成01.12.06
第112回国会 予算委員会公聴会 第2号 昭和63.02.16
第109回国会 大蔵委員会 第7号 昭和62.08.27
第108回国会 予算委員会公聴会 第1号 昭和63.03.19